観光を主力としていない地域における観光を通じた地域課題解決手段を明らかにするため、大分県津久見市をケースとして設定し、研究を進めた。コロナ禍における食観光の取組については、津久見市観光協会事務局長と協働し、経緯及び特徴を整理し、「旅行動向シンポジウム」で発表した。また、食観光キャンペーンについては、これまでの経緯及び関係する社会ネットワークに関する情報収集・整理を行い、『観光文化252号』で発表した。
概要
社会・経済的な発展目標の達成手段として、国や地方自治体による観光活用が顕著に増加している。特に、人口減少社会にあって、地域の持続性が課題となるなか、強力な観光産業を有していなくとも、観光を地域課題解決の手段として活用することへの期待は高い(観光まちづくり)。しかし、地域内のステークホルダーのグループ・組織・機関の権力構造についての研究は十分でない。
そこで、本研究では、観光を主力としていない地域において、観光を地域課題解決に活用する現場において、地域内のステークホルダーのグループ・組織・機関の関係と行動に注目し、誰がどのような考えのもとで、どのような行動をしてきたか、背景にある人間関係や社会課題、社会状況はどうであったか、そのメカニズムを読み解くことを目的とする。
本研究はケーススタディとして3つの観光の取組を掘り下げ、比較し、実際に解決に向けた行動が生まれた要因となったこと(主体と権力構造、行動、社会状況・課題等)を整理する。調査方法は、ステークホルダーのグループ・組織・機関への半構造化インタビューを主とし、分析精度を高めるため、書籍・文献、参与観察、新聞、政策文書などの二次情報と比較対照する。