「2020年度第3回温泉まちづくり研究会」を開催しました(2月25日)
2020年度第3回研究会を2021年2月25日(木)、南魚沼市のryugonで実施しました。概要は以下のとおりです。
1.プロローグ
館内見学・オンライン配信開始
3. 挨拶
温泉まちづくり研究会代表 宮﨑光彦氏
(公財)日本交通公社会長 末永安生
3. 研究会
<第1部> 講演
「雪国文化を未来へつなぐ ryugonのコロナ禍でのチャレンジとこれから」
講師: 井口智裕氏((株)いせん代表取締役、(株)龍言 代表取締役、(一社)雪国観光圏代表理事)
<第2部> ディスカッション
①各温泉地の最近の様子と取組紹介
②ポストコロナの「温泉バカンス」 ~温泉地におけるこれからの滞在スタイルを考える~
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第3回研究会は、「ポストコロナの「温泉バカンス」 ~温泉地におけるこれからの滞在スタイルを考える~」をテーマに開催。今回もコロナ禍を考慮しつつ、現場の感覚をできるだけ味わっていただけるよう、事務局が現地からオンライン配信を行いました。
リアル開催地となったのは、2019年7月に由緒ある温泉旅館を改修してオープンした古民家ホテル、南魚沼市のryugonです。設えはもちろん、食、過ごし方に至るまで、雪国文化を体感できる宿として、さまざまな仕掛けがあちこちに施されています。
開会に先立ち館内案内が行われ、その様子をオンライン配信しました。古い柱や囲炉裏、土間などを生かしつつ、洗練された空間が広がるラウンジやバー、ライブラリーなど、一般的な旅館やホテルよりもパブリックスペースが広くゆったりと作られているのが特徴です。
窓に面して設えられたプライベート感溢れるハイバックソファは、かまくらをイメージしたとのこと。その前に置かれた特注テーブルは、窓の外に見える雪の質感をイメージした彫刻が施されるなど、「建物を周囲の自然に合わせることにこだわっている」そうです。また、タブレットを使ったチェックインやアクティビティ予約、スマホを使った館内のセルフガイドツアーなど、デジタル技術を活用した非接触サービスも積極的に取り入れていらっしゃいます。
開会にあたり、代表の宮﨑光彦氏は「GoToキャンペーンで一時お客様が戻ったものの、感染の第3波が来て大変な状況が続いている。一番大事なことはいい宿づくりを進めることで、人々が動けるようになった時に安心・安全な受け入れ態勢を整えることが大切である。本日は現地に伺えず残念だが、各温泉地のお話を伺い、この難局を乗り切っていきたい」と挨拶しました。
(公財)日本交通公社の末永安生会長は「歴史的に見ても長いパンデミックの後には、必ず次なる成長が起きている。今日の研究会でも、旅館や温泉地の新たな進化、創造につながるヒントが生まれることを期待する」と述べました。
続いて、今回の開催場所となったryugonを経営する井口智裕氏による講演が行われました。越後湯沢駅前のHATAGO井仙というお宿を経営する井口氏は、地域連携DMOの雪国観光圏の取り組みを牽引していることでも知られ、雪国文化を具現化する宿を作るため、新たなチャレンジとして取り組んだのがryugonです。
講演は地域のブランディングやマーケティングなど、示唆に富んだ内容で重要なキーワードが随所に散りばめられていましたが、「観光庁から観光圏という話が出た時はそのコンセプト通りに取り組み、経産省から地域ストーリーという話が出た時は、バラバラな地域コンテンツを経験に落とし込む作業をしっかりやった。示されたことを真面目にやってきただけで、こうした作業が雪国観光圏を磨き上げてきた」という言葉は、意外でしたが、大きなヒントがあると感じられた発言でした。
また、今後は地域の暮らしや文化を学ぶ「滞在型観光」が増えるとし、過ごし方を提案する「トラベル・エクスペリエンス・デザイン」の重要性を訴えました。「重要なのは、内省・気付きの時間となる「間」で、その「間」を過ごしていただくための時間・空間に対する考え方、そしてそれらを受け止める旅行者の意識やリテラシーをどのように上げていくかである」というお話からは、温泉バカンスを考える上でも重要な示唆を得ました。
次に、各温泉地からのコロナ禍での状況や取り組み報告、今日の井口氏の講演に関連してディスカッションが行われました。
草津温泉観光協会・DMO人材育成部会で副会長を務める中澤牧子氏からryugonにおける人材確保について質問があがると、井口氏は「新人を採用・育成するにはある程度、余裕のある人件費が必要」として、「タブレット導入などのイノベーションはそのためでもある。もちろんコロナ対策もあるが、いかに無駄な仕事を省力化して、キャッシュに余裕を持たせるかということを考えている」と述べました。
また、井口氏はryugonで、プロフェッショナルボランティア(プロボノ)を導入していますが「交通費と滞在費のみ払い、週末の10時間働いてもらうバーテンダーを募集したところ、地域と関わりを持ちたい大手企業のITコンサルタントなどが応募してきた」と、旅館には多様な働き方の可能性があることを示唆し、「我々は人材に対して、もう少し寛容な考え方を持つべきでは」と語りました。
今年度は、新型コロナウイルスという大きな課題に直面しましたが、変化を前向きに捉えつつ、信念を持って地道に取り組みを進めていくことの重要性に加え、地域を超えたネットワークが大きな支えになることを改めて実感しました。
(2021.3.12 事務局)