No.59 2017年度第1回「温泉まちづくり研究会」を開催しました(2017年7月27日)
7つの温泉地と当財団が共同で研究活動を進めている「温泉まちづくり研究会」(2008年発足)。2017年度総会及び第1回研究会を7月27日(木)、当財団の会議室で開催しました。概要は以下の通りです。
開催挨拶
梅川智也(温泉まちづくり研究会 事務局長)
末永安生((公財)日本交通公社 会長)
大西雅之氏(温泉まちづくり研究会 代表)
【第1部】総会
(1)2016年度事業報告・決算報告
(2)2017年度事業計画案・収支計画案
【第2部】
1)会員温泉地からの取り組み報告(発言順)
阿寒湖温泉:山下晋一氏(NPO法人阿寒観光協会まちづくり推進機構 専務理事)
草津温泉: 小林由美氏(湯の華会 会長)
鳥羽温泉: 吉川勝也氏((一社)鳥羽市観光協会・鳥羽市温泉振興会 会長)
道後温泉: 新山富左衛門氏(道後温泉旅館協同組合 理事長)
由布院温泉:生野敬嗣氏((一社)由布院温泉観光協会 事務局補佐)
黒川温泉: 松﨑郁洋氏(黒川温泉自治会 会長)
2)温泉地イメージ等調査2016(首都圏)の結果について
・ 調査結果についての報告
3)温泉地の雇用(人材の確保・定着・育成)について
・ 各温泉地での調査実施について
・昨年度の草津温泉での調査概要報告
・ディスカッション
議事進行:守屋邦彦(温泉まちづくり研究会 事務局次長)
——————————————————————————–
今年度最初の研究会となる今回は、6つの会員温泉地の皆さんが参加しました(有馬温泉の皆さんは地元イベントと重なり欠席)。
第1部の総会では、事務局から昨年度の事業報告及び本年度の事業計画案についての説明を行いました。
第2部の研究会ではまず、会員温泉地からの最近の活動についてお話がありました。特に、由布院温泉、黒川温泉からは、7月上旬の九州北部豪雨の影響と現状の報告がありました。両温泉地とも大雨による直接的な被害はほとんどなかったものの、客足にはかなり影響が出ています。
由布院温泉観光協会の生野敬嗣事務局補佐は「昨年の夏は熊本地震後、ふっこう割によってかなり回復したが、再び鈍化した。特にインバウンドや関東からの客足が戻っていない」と述べ、今後は関東方面への情報発信を強化する意向を明らかにしました。
黒川温泉自治会の松﨑郁洋会長は「報道で近隣地域の被害がセンセーショナルに取り上げられたこともあり、特に福岡方面からのお客さんが激減した。お客さんが来ない状態がこんなに長く続くのは初めて。皆さんのお力をお借りしたい」と語りました。
続いて、守屋事務局次長から、今年3月に実施した会員7温泉地の認知度やイメージに関するインターネット調査結果について報告が行われました。対象となったのは埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県の首都圏1都3県の20歳以上の在住者で約2300人から回答を得ました。
梅川智也事務局長は「20、30代はいずれの温泉地についても『知らない』という回答の比率が高く、認知度の向上は今後の課題」と語りました。
研究会の後半は、本日の議論テーマである「温泉地の雇用」についてです。温泉地における人材不足や定着率の向上、育成については、以前からたびたび当研究会で喫緊の課題として指摘されてきました。
大西雅之温泉まちづくり研究会代表(写真)は冒頭の挨拶で「各温泉地の関心が最も高かったのが雇用に関する問題。この会での議論を経て、業界に新たな提言ができるのでは」と期待を示しました。
守屋事務局次長から検討の進め方の説明、続いて事務局の岩崎比奈子主任研究員から、先進事例として草津温泉観光協会DMOの取り組みが紹介されました。
このDMOは雇用環境の整備と人材の確保・定着・育成を活動の柱の一つとしており、人材育成部会を設置しています。2016年8月のDMO発足後、すぐに草津の宿泊施設で働く従業員、経営者の双方に対して雇用に関するアンケートを実施し、率直な意見の吸い上げに取り組みました。従業員からの回答率は特に高く、回収率は約5割に達しました。
同DMOの佐藤勇人人材育成部会長(写真)は「アンケートにはかなり辛辣な意見も多く、暗い気持ちになることもあったが、一緒に取り組む仲間との交流に助けられた。なぜこういうことをやるのかという基本に立ち戻り、モチベーションを維持することが大事」と語りました。
草津温泉の取り組みに触発され、各会員温泉地の皆さんからはディスカッションの冒頭から多くの質問や意見が飛び交いました。各温泉地にとって関心が高い共通のテーマとあって、予定時間をオーバーするほど、非常に熱のこもった議論が行われました。
今後は当研究会としても、会員7温泉地の旅館ホテル経営者、旅館ホテルで働く従業員のそれぞれに雇用環境についてアンケートを実施します。これにより雇用に関する現状把握を行い、調査結果を元に研究会としての提言をとりまとめる予定です。
(2017/8/7 守屋邦彦)