ツーリズム新時代 (観光文化 191号)
特集 : ツーリズム新時代
今年十月にわが国の観光政策の中核的役割を担う観光庁が新設される。旅行市場の成熟化に伴って消費者ニーズが多様化するなか、新たなツーリズムの創出が求められている。
今号では、「ツーリズム新時代」と題して観光創造に向けた新たな取り組みや動きを紹介し、今後の交流人口拡大の可能性を展望する。
- 発行年月
- 2008年09月発行
- 判型・ページ数
- B5判・36ページ
- 価格
- 定価1,540円(本体1,400円 + 税)
※本書は当サイトでの販売は行っておりません。
[巻頭言] 観光新時代 日本ツーリズム産業団体連合会会長 舩山 龍二
今秋、観光庁(Japan Tourism Agency)が発足されることは、国の観光行政史上エポックメーキングな出来事である。行政改革が叫ばれている中で新しい庁をつくったことは、国の本気度を示している。小泉元総理の観光立国宣言以来三代にわたり総理が自らの言葉で観光について言及されたことは、観光を国策として本格的に取り組むということであり、観光新時代の到来を感じる。地域や産業界にはかつてない期待感が高まっている。
翻ってわが国は百五十年前の開国後ひたすら工業化政策をとり、二〇世紀は近代工業国の地位を不動のものにした。しかし、二一世紀に入りグローバル化の潮流は激しく、日本が世界の活力を取り込み、また日本のプレゼンスを示すには、もはやモノだけに頼るときではない。フランス、イタリア、スペイン等が観光を誇り高い輸出産業と位置づけているように、わが国も固有の伝統―文化、精神、景観、食など―の優れたジャパンブランドを活かす戦略構想は正に時代の要請である。加えて国内では人口減と少子高齢化、都市との格差で深刻になってきた地域にとって、閉塞感を打破し、活性化の切り札として観光が脚光を浴びてきている。観光は国全体の問題であり、国民的課題でもある。
このような背景で、二〇〇七年観光立国推進基本法が施行され、次いで基本計画と五大目標が設定されたが、為すべき課題は多くしかも広範囲に及んでいる。観光資源や景観、環境、サービスシステム、外客受け入れインフラ、滞在型旅行、エコツーリズム、青少年交流、休暇制度、都市と農村漁村交流、人材養成、外国人労働……等々。これらのテーマは中央省庁一府十六省に何らかの関わりがあるが、その解決には従来の縦割り行政では限界がある。横断的な取り組みで、大胆な発想転換と地域、住民、産業界を巻き込んだ行動が求められる。この舵取りこそ観光庁の役割であろう。
国内生産規模二十四兆円・雇用数二百三十万人―生産波及効果では、それぞれ五十五兆円・四百七十万人というこの産業が、国民に正しく理解され、更に拡大されるならば、昏迷が続く日本の針路を照らす希望の明かりになるものと確信する。
わが連合会も二〇〇一年発足以来さまざまな提言・行動を行ってきたが、”新設観光庁”と連携してツーリズムの担い手として自覚を新たにし、課題に果敢にチャレンジしたいと考えている。
(ふなやま りゅうじ)
掲載内容
巻頭言
観光新時代 P1 | 舩山龍二 |
特集 ツーリズム新時代
特集1 観光から歓交・感幸へ、そして発光へ ―次世代ツーリズムの創出に向けて P2 |
石森秀三 |
特集2 ツーリズム大国・英国に学ぶ ―英国観光政策の概要と日英比較から見たわが国観光政策への示唆 P6 |
井上健二 |
特集3 ビジット・ワールド・キャンペーン(VWC)の挑戦とその課題 P11 | 田端俊文 |
特集4 新しい”たび”を育む国土と社会を創る ―「『観光立国』下の『観光』の低迷」を打破するために P16 |
梅川智也 |
◆視点
『旅の図書館』開設三十周年を迎えて P21 | 渡邉サト江 |
◆連載
連載I あの町この町 第29回 迎え火・送り火 ―大分県・竹田市 P26 |
池内 紀 |
連載II 風土燦々(2) 孤島の相撲大会(前編) ―島根県隠岐の島町 P32 |
飯田辰彦 |
連載III ホスピタリティの手触り 50 ジンバブエが「夢の国」だったころ P34 |
山口由美 |
新着図書紹介 P36 |