日独交流百五十周年 (観光文化 210号)
特集 日独交流百五十周年
―これまでの軌跡 観光や文化交流の在り方をめぐって
二◯一一年は、日独交流百五十周年。プロイセンの東方アジア遠征団が一八六〇年秋に江戸に到着し、翌年に日本と修好通商条約が締結されました。両国は、経済、科学、政治、文化の分野において互いに重要なパートナー関係にあります。今号では、各分野の有識者の方々に両国間の交流の軌跡、観光などをテーマにご執筆いただき、 これまでどのように二国の交流関係が育まれてきたかについて、その一端を紹介します。
- 発行年月
- 2011年11月発行
- 判型・ページ数
- B5判・32ページ
- 価格
- 定価1,540円(本体1,400円 + 税)
※本書は当サイトでの販売は行っておりません。
〔巻頭言〕相互交流で学び育む未来志向の日独関係
駐日ドイツ連邦共和国大使 フォルカー・シュタンツェル
ドイツの偉大な詩人、ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの言葉に、『分別ある者は旅先で最高の教養を得る』というものがあります。知識の移転においては、実際にその土地や人々を直接知ることに勝る方法はありません。エンゲルベルト・ケンプファーやフィリップ・フランツ・フォン・シーボルトも、そのことを認識していたに違いありません。それは彼らが、オランダの東インド会社の業務に従事し、早くも一七世紀に日本研究のため来日した最初のドイツ人であり、当時のヨーロッパの知識を日本に伝えたからです。
一八六一年には初めて日本とドイツ(当時のプロイセン)間で修好通商条約が締結され、ここに両国の外交関係が正式に樹立されました。それから百五十年後となる今年二〇一一年、数多くの周年事業が展開されています。その当時から両国は、お互いの国に対する敬意を抱くとともに、絆と友好を深めながら関係を育んできました。
一八六一年には初めて日本とドイツ(当時のプロイセン)間で修好通商条約が締結され、ここに両国の外交関係が正式に樹立されました。それから百五十年後となる今年二〇一一年、数多くの周年事業が展開されています。その当時から両国は、お互いの国に対する敬意を抱くとともに、絆と友好を深めながら関係を育んできました。
両国の絆を示す一例として、ドイツ東洋文化研究協会(OAG)をはじめとする関連団体が挙げられます。こうした団体はいまや日本では六十を数え、ドイツでも同様に多数の団体があります。さらに日独の多くの都市が姉妹提携を結び、それを機に専門家同士にとどまらず、一般市民の間の交流が行われることとなりました。
現在の日独両国は、これまで以上に良好な関係を維持しており、学術分野における協力関係、交易・文化交流、あるいは技術移転など、広範囲にわたり、数多くの事業が民間主導で行われています。近代的な通信技術の恩恵を受け、両国の地理的な距離は問題にならなくなりました。そうしてドイツのサッカーや音楽に幅広い興味を持つ日本の若者を目にする一方で、ドイツの若者が日本のマンガやアニメに興じる姿が見受けられます。日本でオクトーバーフェストを祝うかたわら、ドイツでは桜の開花祭を祝っています。
二一世紀初頭を迎えた今、両国は将来にも問題となる共通の課題を抱えており、これがまた大きな共通項として両国を結び付けています。日独両国は、資源が乏しく、過密な人口を抱えた脱工業化社会であり、健全で暮らしやすい環境の維持、天然資源の持続可能な利用、クリーンかつ安全なエネルギー供給、高齢化社会の進展ならびに社会保障制度の維持という大きな課題に立ち向かっていかなければなりません。
グローバル化が進んだ現代世界において、これらの課題に対する持続的な解は互いの協力の下に見いだすのがベストです。いまや学術分野においては、協力と相互研究が成功の鍵となっています。しかし大切なことは、共同研究を行う意思だけではなく、人と人の出会いです。友好関係というものは、出会いと、そこから生まれる相互の理解と信頼によって育まれます。この点において、両国間の観光客の往来を中心とした直接的な交流の拡大が、将来、多くの実りをもたらすことでしょう。まさにそれは数世紀前にゲーテが私たちに残した言葉そのものです。
掲載内容
巻頭言
相互交流で学び育む未来志向の日独関係 P1 | フォルカー・シュタンツェル |
特集 日独交流150周年―これまでの軌跡 観光や文化交流の在り方をめぐって
特集1 日独関係の変遷をたどって―経験から見える両国の関係 P2 | 久米 邦貞 |
特集2 日本とドイツの文化交流、 その心―旅を通して感じる両国の本質 P7 | 小塩 節 |
特集3 プロイセンが面白い―明治維新を先導する日本人とプロイセン P11 | 川口マーン惠美 |
特集4 日独交流に見るワイン文化と観光 P16 | 大島 愼子 |
研究ノート 三陸の観光復興―岩手県田野畑村の取り組み(2) P21 | 大隅 一志 |
連載
連載Ⅰ あの町この町 第46回 友愛の行方 ―徳島県鳴門市大麻町板東 P24 | 池内 紀 |
連載Ⅱ ホスピタリティーの手触り 67 リバイバルという発想 P30 | 山口 由美 |
新着図書紹介 P32 |