第12回 旅行動向シンポジウム
今後の旅行に必要な”価値”とは何か
価値の高い”新たな旅行スタイル”に対応する”観光地”の在り方とは何か
旅が旅行者に与える価値・効用とはどんなものか?現在の旅行スタイルは旅行者のニーズに合った価値のあるものとなっているだろうか?また、ニーズにマッチしない価値のない旅行が売れない理由を不況のせいにしてはいないか?
当財団の研究では、今後の有望な旅行市場である30代=団塊ジュニア世代の人々の価値観が非常に多様であることが明らかとなっています。従来とは異なる新たな価値観を抱いていると考えられるこの層に旅行に出かけてもらうには、既存の旅行パターンではなく、新たな価値・効用を取り入れた新たな旅行スタイルを提案していく必要があります。
観光地の側でも、そうした新たな旅行スタイルに対応した取り組みが必要です。
例えば温泉観光地は、かつては湯治場として、また周遊観光の宿泊拠点としての利用が主でしたが、近年ではウエルネス、リバイタリゼーションといった温泉の新たな活用法、役割が注目されつつあります。
このように、旅行の価値・効用を改めて見直し、現代の人々のニーズに合わせた旅行内容及び観光地の在り方を再考する必要があるものと思われます。
今回のシンポジウムでは、こうした価値の高い旅行とは何か、そのための旅行スタイル・観光地のあり方はどのようなものなのかについて考え、対応策のヒントを得ることを目的とした企画をいたしました。
また、観光産業を代表する方々へのアンケート結果などの分析から、2003年の旅行見通しを探るとともに、全国約2,000サンプルのアンケート調査に基づいて、現在の旅行市場の特徴や旅行者の志向についても分析します。
当シンポジウムを今後の皆様のビジネスにお役立て頂けますよう、多数の方々のご参加をお待ちしております。
概要
テーマ | ~新たな旅行スタイルを模索する ~ ~2003年の旅行動向見通し~ |
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開催日時 | 2002年12月24日(火) 13:30~17:30 |
会場 | 東京・大手町/経団連会館 11階 国際会議場 東京都千代田区大手町1-9-4 (地下鉄大手町駅下車1分) TEL:03-3279-1411(代表) アクセス |
主催 | 公益財団法人日本交通公社 |
お問い合わせ | 公益財団法人日本交通公社 観光文化振興基金事務局 (古川・渡邉・巻山) TEL:03-5770-8360(10:00~17:00) E-mail:jtbfseminar@xb069601.xbiz.jp |
スケジュール
- 第1部 財団報告1
- 「2003年の旅行動向見通し」 (財)日本交通公社 研究調査部 市場分析グループ
2002年の旅行市場は良かったのか悪かったのか、そして2003年はどのような局面を迎えるのかについて、当財団がこれまで15年間継続実施してきた「観光業界を代表する方に聞く旅行の見通しアンケート」や、四半期ごとに実施する「全国観光地動向調査」、また全国の消費者約2,000人に聞いた旅行意識調査の結果などに基づいて解説します。 - 第2部 財団報告2
- 「『17の旅行ストーリー』から30代の多様な旅行動機を解明する -結婚、出産は分水嶺にならない?-」
現在の我が国の旅行市場を牽引しているのは、50代以上と30代です。昨年の米国同時多発テロ後の旅行者数の減少からいち早い回復をみせたのはこれらの層であり、低迷する我が国経済における旅行消費の中心的な存在となっています。
これらの層のうち、50代以上の旅行者が多様な価値観を持つということは本年7月に当財団が主催した『第7回海外旅行動向シンポジウム』にてご紹介しましたが、もう一方の30代ではどうでしょうか。結婚・出産など人生の転機に直面する世代でもあり、より一層考え方・行動パターンに多様性がみられるものと想定されますが、果たして結婚・出産は旅行動機とどのように関わっているのでしょうか。また、男女間でその考え方は異なるのでしょうか。
ここでは、共同研究者である(株)ガウス生活心理研究所の大島氏に研究結果をご報告いただきながら、30代の価値観・旅行動機をもとにした今後の旅行スタイルの方向性、旅行商品の可能性を提示します。◆大島 啓子 氏((株)ガウス生活心理研究所 所長補佐、チーフ・プランナー)
青山学院大学文学部卒業後、化粧品会社の商品企画に従事。その後、女性だけの広告企画プロダクションにて、化粧品、食品会社を中心に商品開発、販促企画などマーケティング戦略全般の立案とコピーライティングに携わる。(株)ガウス生活心理研究所入社後、新たな時代のリーダーである「50歳以上(=ニュー・フィフティ)」を中心とした老若男女の消費・生活動向を探る「新ライフ・ステージ&スタイル調査研究」、グループインタビューに関与。それらの知見を活かした戦略立案を主な業務とする。◆小林 英俊 ((財)日本交通公社 理事・観光マーケティング部長)
東京大学農学部卒業後、(株)日本交通公社入社。1985年には(財)地域活性化センターに情報サービス課長として出向。1991年JTB経営企画室調査役(業界活動担当)、1993年海外旅行虎ノ門支店長を経て、1999年2月より現職。
「自然ガイドによる地域誘致戦略に関する調査委員会」委員(国土交通省)、「国家的課題としての観光調査委員会」専門委員(日本経済調査協議会)、「自律的観光の総合的研究」共同研究員(国立民族学博物館)、「日本エコツーリズム協会」理事、「健康と温泉フォーラム」理事。著書に、『エコツーリズム教本』(訳書、平凡社)。 - 第3部 パネルディスカッション
- 「“温泉”が拓く新しい旅行スタイル -ウエルネスツーリズムの可能性を探る-」
“当財団の調査では、2000年の国内旅行の実態調査で初めて「温泉旅行」が「周遊旅行」を上回りトップとなりました(『旅行者動向2001』参照)。また、別に実施した『私の好きな温泉地』調査では、温泉そのものの質や効能にこだわる人の増加が読みとれます。これら旅行者の本物志向に押されるように(社)日本温泉協会が温泉の格付け構想を発表し、大きな話題となりました。また、温泉を取り巻く社会環境もいろいろと変化をみせています。健康保険制度の財政上の問題を解決する方策として、医療費削減につながる予防医学的な見地から温泉の効能を見直そうという動きが政界を巻き込むかたちで活発化しています。
旅行者の志向や実態をみると、健康志向と旅行との融合の兆しが読みとれ中期的には大きな流れの一つになるであろうことが予測されます。日本では医学界をはじめとして、温泉や海洋、高地が及ぼす心身への効果についての認識が低く、ほとんどの場合「民間療法」や「伝承療法」といった言葉で片づけられてしまいますが、欧米の多くの国では周知の通りこれらの療法について医学的に研究され、医療保険の対象となるとともにより健康的な生き方を目指す多くの一般観光客を集めています。なかには、海外からも多くの観光客を集めている保養施設や保養リゾートがあります。我が国でも、高齢化社会を迎え、ますます健康志向が高まるなか、いつまでも元気で前向きに生きたいと願う旅行者の要望に応えるようなツーリズムの確立が急がれるところです。
今回は、日本における“ウェルネスツーリズム”を立ち上げるのに最も可能性の高い“温泉(地)”に着目し、新たな旅行スタイルの可能性や新たな旅行ジャンル確立の方策について、この分野を代表する方々をお招きし、多面的な議論を展開していきます。◎パネリスト
◆松田 忠徳 氏 (札幌国際大学 観光学部教授)
1998年から1年8ヶ月をかけて全国2,500の温泉を制覇し、『温泉博士』として著名。主な著書に、「全国お湯で選んだ”源泉”の宿」(弘済出版社)、「列島縦断2500湯」(日本経済新聞社)、「温泉主義」(くまざさ出版社)、「温泉教授の温泉ゼミナール」(光文社新書)等。◆飯島 裕一 氏 (信濃毎日新聞社 編集委員)
医学を中心にルポなどを執筆され、1999年度の日本新聞協会賞を受賞したキャンペーン企画「介護のあした」の取材班メンバー。国民健康保険中央会「温泉活用に関する研究会」、民間活力開発機構「温泉療養システム研究会」委員。主な著書に、「温泉で健康になる」(岩波アクティブ新書)、「健康ブームを問う」(岩波新書)、「温泉の医学」(講談社現代新書)、「疲労とつきあう」(岩波新書)等。◆小野 倫明 氏 (常磐興産(株) 企画部商品開発チーフ)
温泉医学、運動生理学、水中運動を専門分野とし、温泉を利・活用した健康づくりプログラムの開発、水中運動、運動療法のエクササイズプログラムの開発に取り組み、バルネオセラピスト(温泉保養士)、アクアセラピスト(水中運動療法士)、パーソナルトレーナー(運動療法士)の育成を行っている。ヘルスツ-リズムによる温泉地経営を提案している。著書に、「年中夢中・水中ウォーキング」(環境工学社)。◆宮地 正典 氏 (タラソシステムジャパン コンサルティング事業部・ 主席研究員)
タラソテラピーセンター「テルムマランパシフィーク」総支配人を経て、現在コンサルティング事業部主席研究員として、タラソテラピー、バルネオセラピー、自然療法、健康増進にかかわる調査、計画策定、プロデュースを担当。予防医学、健康科学に基づいた本物の自然療法を日本に導入し、国民のQOL向上に貢献することを目指している。◆鶴田 浩一 氏 ((株)鶴田ホテル 代表取締役社長)
老舗観光地である別府八湯の再生のため、旅館業のかたわら「クリスマスHANABIファンタジア」、「ハットウ・オンパク(別府八湯温泉泊覧会)」などのイベントや、「別府八湯温泉本」、別府観光ポータルサイト「別府ナビ」の編集等に携わる。現在、別府独自の「温泉の情報公開基準」を策定中。