DBJ・JTBF アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査(2018年度版)

概要

DBJ・JTBF アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査(2018年度版)

本調査は、2012年より株式会社日本政策投資銀行(以下、DBJ)が継続的にアジア・欧米豪12地域(アジアは韓国、中国、台湾、香港、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、欧米豪(アメリカ、オーストラリア、イギリス、フランス)は2016年より調査対象に追加)の旅行嗜好の変化や訪日経験の有無によるニーズの違いを把握することを目的に、海外旅行経験者を対象としたインターネットによるアンケート調査を実施してきたものである。

2015年からは当財団と共同で調査をおこなっており、本年も引き続き、アジア・欧米豪12地域を対象に調査を実施した。また、今年は災害に焦点を絞った追加調査を実施した。

調査概要・回答者属性

報告

調査結果概要

  • 政府は、東京オリンピックイヤーの2020年に、訪日外客数4,000万人、旅行消費額8兆円の目標を掲げている。日本政府観光局(JNTO)によると、2017年の訪日外客数は伸び率に若干の鈍化を見せつつも前年比約2割増の過去最高2,869万人、旅行消費額は4.4兆円に達し、足元の2018年上期においても、累計1,500万人を突破していた。ところが、今年7月以降、西日本豪雨や台風21号、北海道胆振東部地震などの相次ぐ自然災害の影響により、航空便欠航や旅行キャンセルが多数発生、9月の訪日外客数は前年同月比5.3%減の216万人となった。訪日外客数が前年同月を下回ったのは、2013年1月以来実に5年8ヶ月ぶりのことである。
  • (株)日本政策投資銀行は2012年より継続的に「アジア8地域・訪日外国人旅行者の意向調査」を公表し、2015年からは(公財)日本交通公社と共同で本調査を実施している。第7回目の今年は、例年通りアジア・欧米豪12地域(注)の海外旅行経験者を対象としたインターネットによるアンケート調査を6~7月に行い(以下「7月全体調査」という)、急遽、10月初旬に災害に焦点を絞った意向調査を追加で実施(以下「10月災害調査」という)した。今年のレポートは、この2回の調査を元に構成し、両調査の比較を以て災害がもたらしたインバウンド観光客の意向変化を把握することを大きなテーマの一つとしている。
  • 10月災害調査によれば、調査地域全体の47%の人が日本を「自然災害が多い国」と捉え、直近の災害についても約7割が認知していた。同時に、過去の災害から日本が懸命に復興していく過程もよく知られ、日本は「自然災害からの復旧が早い(44%)」、総合的に「旅行先として安全(44%)」とする評価も高かった。一方で、「自然災害時の外国人への対応が進んでいる」とした人は26%に留まり、インバウンド観光客を視野に入れた防災環境のより一層の整備は、今後の課題と言えるだろう。
  • 両調査を比較すると、期間を定めずに訪日意欲を尋ねた場合、10月災害調査の結果は7月全体調査をわずかに上回り、調査地域全体でトップを維持した。ところが、アジア全体では、「当面の間海外旅行の検討を差し控える国」としても日本がトップ(16%)となり、その理由を「自然災害への懸念」とした割合は30%と最も高かった(欧米豪は「予算」が1位で34%)。さらに、訪日の不安材料として「地震」が調査開始以来初めて「言葉」を上回った。
  • 「地方への訪問意向」に関し両調査を比較すると、10月災害調査では、被災地に限定せず、日本各地で全般的に訪問意欲の低下が見られるなど、 訪日旅行回避の動きがボリュームゾーンのアジアで特に懸念される様子は、足元の現実として窺える。今後も、風評被害の長期化を防止するため、官民一体となったきめ細やかな対策の継続が強く望まれるところである。
  • 7月全体調査では、例年通りインバウンド観光客の訪日旅行全般に関する意向の調査を行った。これによれば、調査地域全体で訪日旅行の人気は引き続きトップとなった。アジア全体の訪日旅行希望者の割合は、約6割と高い水準を維持しつつも、調査開始以来初めてわずかに低下し、訪日外客数の85%を占めるアジアでの訪日旅行人気が、安定成長の時代に入りつつあることも示唆された。
  • 訪日旅行での大きな関心は、調査地域全体で「自然」「食」「文化・歴史」「四季」が昨年に引き続き高い割合を得た。国・地域ごとにも特徴が見られ、アジア全体では「温泉」「ショッピング」が人気であり、欧米豪全体では「日本庭園」「世界遺産」「ライフスタイル」などの人気が高かった。前述のアジアでの安定成長の可能性や、自然災害を始めとした様々な外的リスクの影響に鑑みれば、本調査結果に見られるようなターゲットとする地域や国ごとの嗜好を深く観察し、観光地の魅力と重ね合わせる取組を継続することが、欧米豪も含めた訪日旅行発地国の分散を図り、ひいては訪日市場の更なる成長に繋がることとなるだろう。
  • ナイトライフの過ごし方は、具体的な観光名所や店よりも、地元の日本人の夜の過ごし方を眺めて、暮らすように夜の街を楽しみたいという要望が大きかった。国・地域別では、アジアでは「ショッピング」、欧米豪では「文化体験」を希望する声が特徴的であった。本格化する日本版統合型リゾート(IR)についても、こうしたナイトライフへのニーズを上手く取り込みつつ、カジノや商業・アミューズメント施設やホテルなど、IR施設全体としての魅力を高めることが成功の鍵となるだろう。

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発注者 公益財団法人日本交通公社
実施年度 2018年度