■リーダー層では学生やビジネスパーソンがスマートフォンを積極活用
旅行オピニオンリーダー層(以下、リーダー層)全体でのスマートフォン所有率は15.9%(図表1)。性別では男性の方が、年代別では若い層ほど所有率が高くなります。職業別では「学生」の所有率が33.3%と高いほか、「会社員」「自営業」「自由業」で20%を超えています。
図表1 旅行オピニオンリーダー層のスマートフォン所有率
■地図機能はスマートフォン所有者の8割が活用
リーダー層は、旅行先でスマートフォンをどのように活用しているのでしょうか。
最も利用率の高い機能は「地図閲覧・ルート探索」です。所有者の8割が活用しています(図表2)。携帯電話やノートパソコンでは5割未満に留まっており、スマートフォンでの利用率が圧倒的に高いことがわかります。類似の「鉄道路線探索」も高いです。
私自身、スマートフォンを使うようになってから、外出前にパソコンで地図を印刷する習慣がなくなりました。目的地までの移動中にスマートフォンの地図アプリを使って目的地までのルートを探索するのが常です。携帯電話でも現在地からのルート探索は可能ですが、スマートフォンは画面が大きく、地図の拡大縮小もスムーズなので大変便利。旅行中にスマートフォンの地図が活躍しているのもうなずけます。
図表2 旅行先でのスマートフォンなどの活用方法 (分母は各機器の所有者)
■女性はスマートフォンで飲食店を探索、口コミで美味しい店を探す
スマートフォンによる旅行コンテンツ探索で最も多いのは「飲食店」。所有者の6割強が旅行先で「飲食店の探索・予約」をしています(図表2)。携帯電話やノートパソコンに比べて比率が高いことから、スマートフォンの普及により旅行先の現地で飲食店情報を調べる人はさらに増えていくでしょう。どこに泊まるか、どこで遊ぶかは出発前に決めても、飲食店は旅行中に決めることが多いもの。スマートフォンは、飲食店のような“事前に決めない”コンテンツの情報発信に適しているのです。
旅行先で飲食店を調べる人は「女性」に多いのが特徴(図表3)。アンケートのフリーコメントをみると、彼女たちは「口コミ」「美味しい店」の情報を求めています。旅行先で何か食べようと思ったその時に口コミサイトをチェックしてお店を決める、といった選択行動が女性客を中心に今後増えていくことが予想されます。
図表3 旅行先で旅行コンテンツの探索・予約をする人の割合 (分母は各機器の所有者)
■現在地付近で使えるクーポンを手軽に入手したい
スマートフォンなど携帯端末向けに旅行先で提供してほしい現地情報をフリーコメントで尋ねたところ、「クーポン・割引」情報に対するニーズが予想以上に高いことがわかりました(図表4)。日常でグルメサイトやフリーペーパーのクーポンを利用する習慣が浸透しているためでしょうか。具体的には、「位置情報(GPS)」機能と連動させて“現在地周辺にある飲食店の割引クーポンがほしい”といった声が目立ちました。
実は、こうしたニーズに対応するサービスが今年に入って続々と登場しています。グルメ・クーポンのフリーペーパー『ホットペッパー グルメ』で知られるリクルートは、2011年2月にスマートフォン向けの位置情報サービス『RecoCheck』※2を立ち上げ、6月には『じゃらん』や『ホットペッパーグルメ』など同社の既存サイトと連携して55,000件以上のクーポンの取扱を開始しました。今のところ首都圏など都市部での利用が中心ですが、今後は旅行先で活用される場面も増えてくることでしょう。
もうひとつ、要望が多かったのが「当日限定」情報です。これも旅行先に手軽に持ち運べるからこそ生まれたニーズ。当日予約が可能な宿泊施設や飲食店、その日に採れた魚が食べられる店、その日に開催されるイベント情報などなど、様々な希望が寄せられました。当日限定のクーポンを希望する声も目立ちます。旅行者のココロをつかむには、日替わりのきめ細やかな情報発信が効果的効果的なのです。
図表4 旅行先で携帯端末向けに提供されたらうれしいサービス(自由回答を集計したもの)
■新たな現地情報ニーズへの対応を
このように、スマートフォンの登場で、旅行の最中に「そのとき」「その場所」の情報を手軽に収集したいというニーズが高まってきています。情報収集スタイルの変化に、彼らを受け入れる観光地では戸惑いを感じる方も多いでしょう。しかし、受け入れ側にとってもスマートフォンの普及は“ピンチ”ではなく“チャンス”です。予約や仕入れの状況に応じたクーポンを発行したり、当日限定の情報を旅行者に届けたり、といったイールドマネジメントの可能性が広がっているのです。
未体験の方は、ぜひご自身でスマートフォンの世界を体験してみてください。
※1 インプレスR&Dインターネットメディア総合研究所
http://www.impressrd.jp/news/110628/hakusyo_11
※2 リクルート『RecoCheck』
(川口明子)
(お詫び)
第十九話において、震災の影響調査を夏前にも実施する予定としていましたが、その後余震の頻度も大幅に減少し、旅行マインドも回復してきたことから、調査を中止することとしました。 なお、訪日外国人についても、西日本方面から次第に回復してきています。中国や香港の渡航規制も緩和され、6月後半には中国人団体も成田に戻りつつあります。原発問題の解決が進むことで、一層の回復が進むことを期待しています。(塩谷)