セミナー・シンポジウム

平成19年度 観光基礎講座

2007年6月21日(木)・22日(金)
平成19年度 観光基礎講座

~地域の総合力で取り組む観光~

観光産業は多くの産業・分野と広く深く関わりを持つため、観光関係者が取り組むべき課題は多岐にわたり、また複雑なものとなります。既存の観光地に限らず、これから観光振興に取り組もうとする地域においても、観光の基礎的な知識の裏付けのもとに、明確な地域の将来ビジョンを持って地域振興や観光振興を進める人材が求められます。

当財団は旅行・観光を専門とするシンクタンク、コンサルティング集団として、全国各地で観光振興のお手伝いをしてまいりました。本講座は、これまでの経験とノウハウを活かして独自の視点と切り口で構成しています。観光・地域振興・リゾート関連事業に新たに従事される自治体や業界の方々、地域の観光振興の担い手の方々の人材育成の一助として平成8年度に開講以来、今年で12年目を迎えます。

観光をめぐる基礎的な知識の習得はもちろんのこと、官民の連携や専門的な実践ノウハウ、ヒントといった実用情報も盛り込んだ、観光担当者にとっては日々の業務に役立つ講座です。約30名という少人数制により、講師への質問や参加者同士の意見交換の時間も充実させています。

行政のご担当者のみならず、施設経営や地域づくりに取り組まれる観光業界の方も、この機会に是非ご参加下さい。特に本年は、松本市の組織横断的な観光戦略本部による取り組み、地域の食や産業の活かし方、滞在型観光地づくりなど、「観光は地域の総合力で取り組むもの」というテーマを基調にしています。

概要

テーマ ~地域の総合力で取り組む観光~
開催日時 2007年6月21日(木)~22日(金)
会場 第一鉄鋼ビルA会議室
東京都千代田区丸の内1-8-2 第一鉄鋼ビル 地下1階
JR東京駅 八重洲北口 徒歩3分
地下鉄大手町駅 B10出口 徒歩1分

スケジュール

■6月21日 (木)

10:00 開講・オリエンテーション
10:10 講義1 : 成熟化時代の観光マーケティング
時代とともに旅行者も観光のあり方も変化しています。この講義では、成熟化した社会における消費行動としての旅行を読み解きながら、観光振興に携わる方にまずとらえていただきたい、現代社会における観光の意味を解説します。これからの観光市場にはどんな欲求の実現が求められることになるのか、地域はどのように取り組むべきなのか提言します。

講師:(財)日本交通公社 理事 小林 英俊
兵庫県生まれ。旅行現場での豊富な経験を踏まえた観光マーケティング、地域活性化が専門。観光と環境、観光と健康の実践的研究、エコツーリズムの推進はライフワーク。

12:45 講義2 : 旅行者マーケットの最新動向
地域の観光戦略を立案するためには、旅行者の動向に関する情報収集を行い、マーケットの実態とニーズを把握する必要があります。毎年当財団が独自に調査、分析して取りまとめている旅行マーケットレポート『旅行者動向』のデータ等をもとに、旅行マーケットの捉え方と最新の動向について解説します。(『旅行者動向2006』をテキストとして当日さしあげます)

講師:(財)日本交通公社 研究員 川口 明子
東京都生まれ。当財団で主に旅行者市場分析に関する調査研究を担当。常に旅行マーケットの動向をウォッチしている。

14:00 講義3 : 観光は総合政策!
~松本市観光戦略本部の組織づくり・人づくり~

松本市は、平成16年、観光行政を専門的に扱う「観光戦略本部」を新設しました。既存の観光温泉課とは別に教育、福祉、農林などと連携し、全庁横断的な観光戦略を練ることがその狙いです。「市民の時代の観光」を基本戦略の一つに掲げ、市民の「参加」にとどまらず「経営参画」を促す人材育成を重視、これまでと異なる立場の人たちも観光へのかかわりを深めています。総合的・複合的な産業である観光に松本市がどのように取り組んでいるのか、前観光戦略本部長にうかがいます。

講師:松本市安曇支所 支所長 赤廣 三郎 氏
静岡県生まれ。発足時から松本市政策部観光戦略本部長として総合的な観光政策を企画立案、実践。本年から安曇支所のトップとして観光を活かした地域政策を担当。平成4年にはじまった我が国屈指の音楽祭「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」の仕掛けにも深くかかわっている。

16:00 意見交換会(~18:00)
○課題の共有、意見交換ほか
ご参加の皆様の地域での取り組みや課題を共有化し、講師や参加者が意見を交換する場です。ネットワークづくりにも役だったと毎年ご好評いただいています。

■6月22日 (金)

10:00 講義4 : 観光の経済効果と観光統計の活用・整備
観光統計の役割は、観光産業の重要性の啓蒙、観光地における問題意識の共有、政策評価の中間目標としての利用、観光地マーケティングへの活用など、非常に広範囲にわたるものです。この講義では、観光統計を基礎として作成される重要指標「経済波及効果」の紹介を通じて、自治体における観光統計の望ましい体系と活用方法について解説します。

講師:(財)日本交通公社 主任研究員 塩谷 英生
茨城県生まれ。国内外の観光統計研究を重ねるとともに、2000年以降、国や沖縄県の観光統計作成、経済効果の推計に継続的に携わる。

11:20 講義5 :観光と地域資源の新しい関係づくり
~観光と地域の「食」、「産業・技術」~

地域には磨き方次第で宝となる素材がありますが、従来の観光産業の視点にとらわれていると、それを活かす新しいステップに踏み込むことができません。ここでは次の2つのテーマについて、その魅力を再確認し、活用のための課題を整理します。
【食】・・旅行者の「おいしいもの」に対するニーズは強く、中でも地域色豊かな食への期待は高いものがあります。食材生産者らと連携して観光客に地域の味覚を提供することは、幅広い地域活性化にもつながります。
【産業・技術】・・・我が国の”殖産興業”に貢献してきた産業の技術や歴史にスポットをあてたヘリテージ・ツーリズムの取り組みも盛んになってきました。普段何気なく見ている工場ひとつとっても、実はその地域独特の気候風土や歴史文化と密接にかかわっているものが多く、産業遺産は地域の特徴や歴史を雄弁に地元住民や観光客に語りかける資源でもあるわけです。

講師:(財)日本交通公社    主任研究員 堀木 美告
千葉県生まれ。観光・リゾート計画策定業務を中心に従事し、食の魅力をはじめ、地域資源を観光面で活用する方策について研究している。

講師:(財)日本交通公社   主任研究員 牧野 博明
広島県生まれ。ヘリテージ・ツーリズム推進を目指し、各地における産業遺産の保存・活用による地域活性化をテーマとする活動・研究に従事。このほか、運輸動向からみた観光の動き、旅行が健康に及ぼす効果に関する研究なども担当。

13:50 講義6 :滞在型観光地づくりとは何か
人口減少時代を迎え、国内旅行需要の拡大は簡単ではなくなります。打開策として、地域の中での滞在時間、滞在日数を伸ばすこと=滞在型へのシフトはもっと真剣に取り組まなければなりません。滞在型の観光地とは従来の観光客受入とどこが違うのでしょうか。地域で滞在需要を取り入れて行くためにはどういう視点が必要なのでしょうか。事例も加えながら解説します。

講師:(財)日本交通公社   研究主幹 大野 正人
神奈川県生まれ。宿泊・観光施設の事業化計画が専門。別府温泉、三朝温泉など、温泉観光地の活性化にマーケティングの視点を重視しつつ携わる。

15:15 講義7 :インバウンド振興と地域の可能性
インバウンド(訪日外国人旅行者)マーケットへの取り組みも、滞在需要とならんで国内旅行需要拡大に期待がもたれています。
外国人旅行者の誘致といっても一般的な観光旅行だけでなく、教育旅行、MICE(Meeting,Incentive,Convention, Event)、日本文化観光など、受入地域の特徴によって可能性は異なり、その戦略も変わってきます。日本のインバウンド振興政策の流れや現状、課題について整理してから、積極的に取り組んでいる地域の事例、期待される効果、地域の可能性について考えます。

講師:(財)日本交通公社    調査役 有馬 義治
兵庫県生まれ。(財)地域活性化センター等への出向を通じて地域づくりに多数かかわる一方、2003年よりビジットジャパンキャンペーンの事業評価や国・県の外客誘致計画調査に多数携わっている。

16:15 総括(ふりかえり)
(財)日本交通公社 理事 小林 英俊
16:40 閉講

◆企画・進行:(財)日本交通公社 主任研究員 久保田美穂子
長野県生まれ。当財団で主に温泉地、旅館・ホテルをめぐる旅行マーケットの動向、地域振興のためのセミナー企画に関する業務に携わる。平成16年度より本講座の企画運営を担当

※講義内容・講師は、やむを得ず変更となる場合がございます。その節はどうぞご了承下さい。