海士町は、180の島々からなる隠岐諸島の4つの有人島の一つ、中ノ島にあります。1島1町、人口約2300人の小さな島です。
 海士町を象徴する言葉、島らしい生き方や魅力、個性を堂々と表現する言葉である「ないものはない(便利なものはなくてもよい、生きていくための大事なことは、すべてこの島に詰まっている)」を合言葉に、今ある資源を活かした「しごとづくり」、若者との交流による「まちづくり」、教育の魅力化による「ひとづくり」に挑戦してきました。
 成功事例と言っていただけることも多くありますが、私たちは「挑戦事例」と思っています。

 そうした海士町の挑戦の一つが、2021年7月、隠岐ユネスコ世界ジオパークの拠点機能と宿泊機能を兼ねる複合施設としてオープンした「Entô(読み:エントウ)」です。島唯一のホテルのリニューアルプロジェクトであり、海士町の魅力・価値観・暮らしの中に溶け込んでいただく施設、島全体を楽しむ拠点を目指しました。「Entô」のオープンによって、コロナ禍で大打撃を受けた島内観光産業も、少しずつ活気づく手ごたえを感じています。「Entô」のプロジェクトは、ホテルのリニューアルにとどまるものではありません。島の100年後をつくる事業のひとつであり、島まるごと観光の入口として、人の循環、経済の循環の拠点として、世界とつながる交流の拠点として、海士町の未来そのものを創る挑戦が、これからも続きます。

 これからも、「みんなでしゃばる(引っ張る)」「承前啓後(昔からのものを受け継いで、未来を切り拓く)」の精神で、挑戦し続ける海士町を目指してまいります。

大江和彦
(海士町長)
1959年海士町生まれ、海士町育ち。島根県立隠岐島前高校を卒業後、大阪の専門学校で建築を学び、民間企業を経て、海士町役場に入庁。産業創出課長時代には、地方経済の振興に尽力する人を選ぶ「地域産業おこしに燃える人」の第3期メンバーに選ばれる。2018年、「自立・挑戦・交流×継承・団結~心ひとつに!みんなでしゃばる島づくり~」を町政経営の指針に掲げ、海士町長に就任。2021年から全国の若者を島に引き寄せる「還流おこしプロジェクト」、副業を可能とする公務員の働き方改革「半官半X」を政策の全面に打ち出し、さらなる地域振興に奮闘中。