訪日外国人旅行者の地方訪問が増えつつある中、各地域では、インバウンドによる経済効果を高めるための様々な取り組みが行われている。
こうした取り組みを進めるにあたっては、域内調達率(地域内から原材料や雇用者を調達する率)を上げる観点から、各種地域資源を活用することが重要となる。
中でも、「特産品」の活用は、旅行者がお土産として購入することで消費単価の向上につながるだけでなく、特産品自体が誘客の源泉となることで旅行者数の増加につながる等、様々な角度から経済効果を高めることが期待される。
そこで本特集では、特産品がインバウンドによる経済効果の向上に果たす多様な役割について検討する。


 

 

   平成30年の訪日外国人は3119万人、訪日外国人旅行消費額は4.5兆円と過去最高水準となり、そのうち約1.3兆円が訪日外国人による日本の食のマーケットとなっていす。
観光庁の調査によると、訪日外国人が「訪日前に期待していたこと」の第1位は「日本食を食べること」です。さらに、地方旅行でしたいことは、「温泉・自然観光地訪問」に次いで「郷土料理を食べる」ことだという民間会社の調査結果もあり、訪日外国人が全国各地の地域の多様な食に高い関心を持っていることが現れています。
増大するインバウンドを、ゴールデンルートのみならず、日本の食・食文化の「本場」である農山漁村にも呼び込み、他では体験できない味わいを楽しんでいただくとともに、その「食」を支える農林水産業や地域の活性化に繋げていくことが、我が国の経済活性化にとっても極めて重要となっています。
農林水産省は、農泊(農山漁村滞在型旅行)を推進している地域であって、多様な地域の食とそれに不可欠な農林水産業や特徴のある風土、伝統文化等の魅力を一連の「ストーリー」として訪日外国人旅行者を誘客する重点地域を農林水産大臣が認定し、「SAVORJAPAN」というブランドで一体的に海外発信する仕組みを平成28年度に創設し、これまでに21地域を認定してきました。
また、このような外国人の最大関心事の「食」に着目し、訪日外国人の滞在中の多様な旅行体験、例えば、芸術、映像、文化・歴史、スポーツといった食以外の分野と「食」を組み合わせて新たな体験として提供することで訪日外国人の食の経験値を上げるとともに(例えば、農山漁村風景を活用した現代アートと地産地消レストランのコラボ)、帰国後も日本の食への関心を高め、それを各国のレストランやスーパー、越境ECサイト等で再体験できる機会を提供することは、訪日外国人の満足度向上による訪日需要の拡大のみならず、日本産農林水産物・食品の輸出拡大にも寄与するものです。
農林水産省としては、このような地域での活動を支援していく取組として、①食と異分野のものを「掛け合わせる」、②日本の食が世界を「駆け回る」という思いを込めて、「食・駆けるプロジェクト」を昨年9月に立ち上げ、本格展開に向けた準備を進めています。今年は、地域の現場における「食と異分野の融合」「かけ算」の具体的な体験コンテンツを、若者を始め幅広い関係者から収集することとしています(4月予定)。
その後、寄せられた取組等をさらに磨き上げ、魅力ある旅行情報として旅前・旅中・旅後に応じた様々な手法によって海外に発信し、インバウンドの需要拡大・海外での再体験の機会拡大に繋げ、日本の食が世界を駆け巡る環境を創出していきたいと考えています。
今年は「ラグビーワールドカップ2019日本大会」、来年は「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」、再来年は「ワールドマスターズゲームズ2021関西」の開催が予定されています。インバウンドの追い風の中、その風を受けとめる帆を張る取組への支援に取り組んでまいります。