恩納村文化情報センター
村の基幹産業である観光と図書館の融合
取材に応じてくれた 呉屋美奈子氏

 

恩納村は、沖縄本島のほぼ中央の西海岸に位置する。人口1万人の小村でありながら、大型のリゾートホテルを中心に、沖縄本島の宿泊施設(ホテル・旅館)収容力の約2割が集積する県内屈指の観光・リゾートの村である。恩納村文化情報センターは、それまで図書館がなかった村にとって、村民が長らく待ち望んだ施設として2015年4月に開館した。
同センターは、「恩納村に関するあらゆる情報を収集し、村内外へ発信する」ことを目的とした、観光情報提供機能と図書館機能を備えた複合施設で、計画当初から観光客の利用を強く意識した施設づくりをしている。
施設の検討・準備段階から中心的に関わり、現在も運営の現場を牽引する同センター係長の呉屋美奈子氏に話を伺った。

文化、知識、観光への架け橋に
恩納村文化情報センターは、既存の図書館のイメージにとどまらず、当初より村の基幹産業である観光にも寄与する施設を目指して整備された。バス路線でアクセスしやすい国道58号線沿いであることを条件に、北部観光への入口となり、既存施設の集客効果も期待できる場所を慎重に検討し、村南部仲泊地区の「おんなの駅なかゆくい市場(農産物物販センター)」が隣接する位置に、恩納村博物館(2001年開館)に併設するかたちで整備されたことも、村民と同時に観光客の利用を考慮したことによる。
観光立村である恩納村の大きな目標の一つは、宿泊滞在数を1日でも延ばすことにもある。また雨天時の対応や、マリンアクティビティだけではない観光ニーズの顕在化といった村の観光課題への対応策も、同センター整備に当たって話し合われた。
「私たちの目標の一つは『るるぶ』や『まっぷる』などのガイドブックに載ること。図書館も観光情報発信を担う施設として充分に力を発揮できると考えています。」と呉屋氏は語る。ガイドブックに載ることで観光客も立ち寄ってくれ、それによって恩納村の魅力を発信できるようになるからである。

観光客に利用しやすい施設とサービス
施設は3階建て(延べ面積1・689㎡)で、1階:観光情報フロア、2階:図書情報フロア、3階:展望室で構成されている。
1階の観光情報フロアは、「恩納村および沖縄北部へのゲートウェイ」として位置づけられ、観光協会から配置された2名の「旅の案内人」が村内および北部観光地、観光施設の情報提供を行っている。フロアには、単なる観光案内機能にとどまらず、「キオクボード」(村民と一緒につくる地図)や「キオクバンク」(村民・観光客参加型のフォトアーカイブ)、「マップナビ」(村内および沖縄北部を楽しむための最新情報を紹介する壁面の大型マップ)など様々な工夫がなされ、〝村民とともに恩納村の魅力を発信し、ともに分かち合う〞文化情報拠点の創出を図っている。
一方、2階の図書情報フロアは、窓際の閲覧席から美しい沖縄の海や夕日が楽しめ、リゾート地ならではの図書館としての魅力を持っている。また利用サービスや蔵書にも観光客を意識した図書館づくりをしている。たとえば、利用者カードには「村内在住・在学・在勤者」用と「村外在住者」用の2種類があり、全国どこに住んでいても本を借りることができる。県外登録者はあと数県で全国を網羅するところまでき
ているという。
また恩納村・沖縄県の郷土資料を揃えた「郷土書コーナー」には、沖縄の旅の本を集めたコーナーもある。ホテルのパンフレットやイベントチラシなどを過去のものも含めて収集したパスファインダーも充実しており、長い目で見れば村内ホテルのアーカイブ資料としても貴重である。郷土資料の収集など村民のために行うサービスが、結果として観光客に向けたサービスの向上にもつながっている。

観光施設、宿泊施設との連携
周辺施設との連携も積極的である。本を借りると隣接する「おんなの駅」の商品が5%割引される「割引クーポン」はその代表である。センターで本を借りた後利用者がおんなの駅へ、おんなの駅で買い物後クーポンを求めてセンターへ、という双方の利用促進につながるユニークなサービスである。
一方、村内の大型リゾートホテルとの連携では、ミニライブラリーの設置がある。センターの蔵書数十点を一定期間(半年〜1年程度)貸し出すもので、センターでは本の選書や図書レイアウトのアドバイスなどを通してホテルのサポートを行っている。

図書館と観光の融合により発揮された相乗効果
恩納村文化情報センターの来館者数は、当初の目標を上回り、開館初年度2015(平成27)年度の約6・8万人から、2018年度は約8・9万人へと着実に増加している。また、センターの開館による周辺施設への相乗効果も大きく、併設する博物館の入場者数は約2・5倍に、また「おんなの駅」の年間来客者数も100万人を大きく上回るまでに増加をみている。
観光に特化した図書館を目指す恩納村文化情報センターは、村民と観光客がともに村の魅力を再発見し魅力を発信するとともに、観光振興にも寄与する重要な存在となりつつある。  取材・文:大隅一志