【Prologue】
柔軟かつ果敢に挑戦する研究者集団を目指して
JTBF経営計画「Challenge2026」の概要

観光文化振興部長/主席研究員 吉澤清良

はじめに
 当財団は、旅行・観光分野における「実践的な学術研究機関」を目指した長期計画「‘22ビジョン」(計画期間10年間)を、一年前早く、2020年度に終了した。2021年度は、2026年度までを計画期間とする新たな経営計画「Challenge2026 〜柔軟かつ果敢に挑戦する研究者集団を目指して〜」の初年度にあたる。
 観光文化の振興による豊かな社会の実現に寄与するために、私たちは、前計画(「‘22ビジョン」)で掲げた「研究・調査」と「実践」を両輪とする基本的な姿勢を堅持し、かつ、これまで以上に先行的・国際的な観光動向にも視野を広げて業務に取り組んでいる。また、より一層広く社会的に認知され、信頼され、必要とされる組織となることを目指して、その成果を積極的に情報発信している。
 2021年度は、研究活動により戦略的・機動的に取り組むために、研究部門を2部(観光地域研究部、観光政策研究部)5室(環境計画室、地域戦略室、まちづくり室、社会・マネジメント室、活性化推進室)に再編し、特に室を中心とした運営体制を強化した(図1)。

 また、当財団のブランド力を高めるため、「観光文化情報センター」の情報発信における体制面での拡充を図るとともに、自主事業の推進役としての役割を付加し、「観光文化振興部」へと組織変更した。
 当財団の事業の柱の一つである自主事業(当財団の独自財源を活用した事業)は、「自主事業推進委員会」を設けて、その内容により「基盤事業」、「基盤調査研究」、「自主研究」の3つに区分した。その上で、特に「自主研究」においては、私たちが「我が国の観光分野における代表的な研究者集団」であるためには何が必要かを、研究員自らが主体的に考え、自発的に企画提案する方式を導入した。
 2021年度は、継続テーマ・新規テーマ含めて計17件(基盤調査研究4件、自主研究13件)の研究に取り組み、適時、研究成果を公開している。

JTBF経営計画「Challenge2026」の概要

 当財団は、新たな経営計画のもと、「柔軟かつ果敢に挑戦する研究者集団を目指して」をスローガンに、より一層の高みを目指して〝Challenge〞を続けている。
 観光に関する諸問題に向き合う基本的姿勢は前経営計画(「‘22ビジョン」)を踏襲し、①課題や現象の認識、②課題や現象を一般化・理論化した知見の獲得、③知見の発信、④実践の場へのフィードバックを掲げた(表1)。現経営計画では、「研究・調査」と「実践」が相互に影響し合う好循環・好サイクルを確立し、社会的信頼感と高い競争力を備えた、国や地域の諸課題に対する解決力を発揮できるようになること、そしてこれまで以上に先行的・国際的な観光動向に視野を広げ、また研究及び実践の成果の国内・海外への発信を強化し、我が国の観光分野における代表的な研究者集団としてのポジションと国際的な姿を目指すこととしている(図2)。

『観光文化252号』特集テーマについて

 現計画に基づき、当財団ではコロナ関連の様々な研究を行い、その結果を積極的に発信してきているが、そうした研究結果から見えてきたことは、コロナ禍によって旅行市場や観光地づくりにおける変化が進むということ。そして、今回の『観光文化252号』の特集のテーマは、「今後の観光文化創造に貢献する研究領域」とした。
 当財団には様々な価値観、問題意識を持った研究員が所属しているが、今期からは特に自主研究において、社会的・国際的に顕在化・共有されつつある課題や技術、ムーブメント等(社会的な環境変化)が、我が国の「観光の(少し先の)未来」にどのような影響を及ぼすのか、またそれらにどのように対応すべきかなどを意識して一部の研究テーマを設定し、研究活動に取り組んでいる。
 本誌では、当財団の研究員が、どのような課題意識を持ち、どのような研究フレームで研究活動に取り組み、現時点で何が見えてきたのか、また今後の展開などについて紹介していくことで、観光関係者が今後の観光振興を考える一助となればと考えている。
(よしざわ・きよよし)