企画展示
館内では、当財団の研究活動の紹介や、テーマごとに蔵書を紹介する企画展示を行っています。ご来館いただいた際に是非ご覧ください。
ライブラリープラザ………1F
「新・湯治」とその楽しみ方
(2023年1月~2023年3月)
温泉地には、温泉だけでなく多様な自然、歴史・文化、食など様々な魅力が詰まっています。「新・湯治」とは、2017(平成29年)7月に「自然等の地域資源を活かした温泉地の活性化に関する有識者会議」により提言された、現代のライフスタイルにあった温泉地の過ごし方の提案です。「新・湯治」は、温泉地周辺の地域資源を多くの人が楽しみ、温泉地に滞在することを通じて心身ともにリフレッシュすること、そして温泉地を多くの人が訪れることで、温泉地自身のにぎわいを生み出していくことを目指しています。(環境省 HPよりhttps://www.env.go.jp/nature/onsen/spa/index.html)
また温泉地の魅力向上や人々の健康増進に寄与することを期待して、全国の温泉地では、温泉地に滞在することの療養効果―温泉地での滞在全体がどのように心身へ影響を与えるか―を把握する調査が長年続けられてきました。
エントランスギャラリー………1F
脱炭素と観光の現在地
(2022年12月~2023年3月)
今回の展示では、研究成果の一部として、交通・輸送・エネルギー面における脱炭素化、観光地としてカーボンニュートラルを目指すパラオ、脱炭素化の取り組みを見える化したブルガリアの事例など、観光や交通・運輸の分野で脱炭素に取り組む4つのケースを取り上げ、紹介しています。
また、機関誌『観光文化』において独自に整理・提示した「持続させる対象」と「取組の時間軸」の2軸からなるサステナブルツーリズムのフレームワークに照らして、脱炭素の取り組みの位置づけの変遷についても考察しています。
古書展示ギャラリー………1F
古書からひもとく戦前の京都観光
(2022年12月~2023年3月)
日本のみならず海外からも高い知名度と人気を誇る京都ですが、その歴史をみると、行政、民間、市民が連携しながらつくり上げていったことがわかります。
その背景となっているのが1869(明治2)年の東京遷都です。京都は千年以上続いた都としての座を奪われたことで、人口は約半数にまで減少し、まちは衰退していきます。そのことに危機感を持った地元の豪商は1871(明治4年)に博覧会を企画・開催します。
翌年には、第1回京都博覧会を開催しますが、勧業の意味合いを強め、娯楽要素を増やしました。今でも京都の風物詩となっている「都をどり」や「鴨川をどり」はこの時から始まりました。また、当時は自由に国内を周遊することができなかった外国人の入洛制限の解除を政府に陳情し、約700人の外国人が入場しました。好評を博した京都博覧会は、明治・大正にかけてほぼ毎年開催されることになります。
また、明治以降、都市整備にも力を入れ、琵琶湖疎水の整備、水道事業、道路の拡張、電気軌道敷設による交通網整備事業などを行ないます。インフラを整備することで伝統産業も大きく発展しました。このように都市機能が充実したことも博覧会の見どころになっていきます。
1889(明治22)年の皇室典範により、即位式や新嘗祭は京都で開催することが定められましたが、皇室行事や、平安遷都千百年記念祭といった周年事業など、ハレとなる機会を契機に観光地としての整備が進んだことは京都の特徴でもあるといえます。
このように数々の博覧会を開催し、国内外から多くの喜賓、来訪客を受け入れてきた京都市は、1930(昭和5)年に行政として初めて観光課を設置します。1932(昭和7)年には全国の観光協会等とともに日本観光地連合会を結成するなど、日本の観光行政を牽引してきました。
京都を代表する年中行事や観光施設の中には、この時代に整備されたものも多く存在します。近代京都の歴史をふまえて、ぜひ現代の京都観光を楽しんでみてください。
主な展示図書一覧
❶ 京都博覧会の開催
『 京都名所双六案内』小林藤次郎、1909
❷ 海外のガイドブックにおける京都の紹介
『A handbook for travellers in central&northern Japan:being a guide to Tokio,Kioto,Ozaka,Hakodate,Nagasaki,and other cities,the most interesting parts of the main island,ascents of the principal mountains,descriptions of temples, and histrical notes and legends 2nd ed』
Ernest Mason Satow A.G.S. Hawes、John Murray、1884
❸ ビューローの印刷物の嚆矢となった「京都案内」
『Map&guide of Kyoto and environs』
Japan Tourist Bureau
❹ 京都におけるホテルの誕生と発展
『Map of Kyoto and vicinity』
Miyako Hotel、都ホテル、1913
『京都ホテル御案内』京都ホテル
❺ 京都宿屋業組合の設立
『京都宿屋業組合沿革史』佐々木猛 編、京都宿屋業組合事務所、1933
❻ 日本で最初となる観光課の設置
『大礼記念京都大博覧会 団体観覧の栞』
大礼記念京都大博覧会事務局、1928
❼ 京都生まれの吉田初三郎による鳥瞰図
『京都観光案内』京都市観光課
❽日本観光地連合会の結成
『観光連盟情報 1937(第1巻 第1号-12号)』
日本観光連盟、1937
展示資料一覧
(関連図書/古書以外)
・『京都ホテル100年ものがたり』京都ホテル、1988
・『京都観光学のススメ』井口和起、人文書院、2005
・『京都観光学 改訂版』山上徹、法律文化社、2007
・『観光京都研究叙説』杉野圀明、文理閣、2007
・『京都 今昔歩く地図帖 彩色絵はがき、古写真、古地図でくらべる(学研ビジュアル新書)』井口悦男 生田誠、学研パブリッシング、2011
・『固有価値の地域観光論 京都の文化政策と市民による観光創造(文化とまちづくり叢書)』冨本真理子、水曜社、2011
・『観光名所から1000年の流れがよくわかる! 図説 時代順 京都歩き』森谷尅久 監修、PHP研究所、2012
・『大京都モダニズム観光』橋爪紳也、芸術新聞社、2015
・『京都観光 40人の提言』三好克之、白川書院、2017
・『明治・大正・昭和初期 日本ポスター史大図鑑』田島奈都子 編著 函館市中央図書館 編纂協力、国書刊行会、2019
・『吉田初三郎鳥瞰図へのいざない』劉建輝 石川肇 古川綾子 編、人間文化研究機構国際日本文化研究センター、2019
・『観光立国政策と観光都市京都 インバウンド、新型コロナに翻弄された京都観光』広原盛明、文理閣、2020
・『日本の観光2 昭和初期観光パンフレットに見る 近畿・東海・北陸篇』谷沢明、八坂書房、2021
・『吉田初三郎 鳥瞰図集』岡田直、昭文社、2021
・『新・京都観光論』永田美江子、須田寛、交通新聞社、2022
旅の図書館の蔵書から
旅の図書館は、開設以来、国内外の旅行ガイドブックから観光研究の専門書・学術書まで、多様な利用者層に応えられる図書・資料を幅広く収集してきました。
このうち【古書・稀覯書】では、主に戦前を中心にした観光に関する貴重な文献コレクション約2,700冊を所蔵しています。わが国で最初の外客誘致・斡旋機関として発足したジャパン・ツーリスト・ビューロー(当財団及び(株)JTBの前身)の生みの親である木下淑夫氏が収集した国内外の貴重な資料(木下文庫)約90冊をはじめ、1880年代~1940年代の文献からは、戦前のわが国の観光産業やインバウンドをはじめとした観光政策、観光事業等の動きがわかります。
当館では、こうした古書・稀覯書の多くを、古書店の協力を得て入手しています。先日も「青羽古書店(京都府京都市)」より[グリフィス]『横浜ガイド』(1874年横浜刊)という興味深いガイドブックを購入することができました。
青羽古書店のホームぺージ上では、本書は次のように紹介されています(一部抜粋)。
本書は、日本で刊行された最初期の英文ガイドブックと言えるもので、明治初期にアメリカから来日したお雇い外国人グリフィス(William Elliot Griffis,1843‐1928)によって書かれています。幕末から明治初期にかけて横浜や神戸といった居留地に滞在する外国人や旅行者が急増していっていたにもかかわらず、外国人のための手頃な旅行ガイドブックが刊行されていなかったことに鑑みて刊行された、横浜とその近郊を簡便に紹介したガイドブックです。わずか40ページ弱の小冊子ではありますが、外国人旅行者、滞在者が利用しうる、在住者による英文ガイドブックの嚆矢として、日本のツーリズム史において大変重要な位置を占める作品と言えます。(http://www.aobane.com/books/1466)