地域のプロモーションビデオ
ここ3~4年ほど、宮城県気仙沼市の唐桑地区に月1~2回の頻度でお邪魔しています。 唐桑地区は三陸復興国立公園内に位置し、リアス海岸と海岸段丘が一体となってつながる景観が特徴のゆるやかな起伏に富んだ半島です。遠洋漁業で栄えた歴史を背景として、漁業に根ざした生活文化が根付く地域でもあり、それらの地域資源(お宝)を活かした観光プログラムを企画し、地域の皆さん自らが提供していくことで観光復興を図っていこう、というプロジェクトのお手伝いをしています。
現地では、もっぱらご主人が地元の観光協会の会長をされているユースホステルを常宿として利用させていただいているのですが、そのFacebookページに、最近、唐桑地区の風景を上空から捉えた動画がアップロードされるようになりました。
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- リアス唐桑ユースホステルFacebookページ(3/29、4/12投稿動画参照)
https://www.facebook.com/karakuwa.yh
BGMとともに「地域紹介プロモーションビデオ」のような趣があるこれらの動画は、ユースホステルのご主人が趣味で購入した「ドローン」と呼ばれる機械を使って、近所の友人とともに撮影・編集したものだそうです。
個人レベルでもこのような映像が撮れるようになったのか、と一種の驚きを感じます。
様々な分野で活用が進む「ドローン」
この映像を撮影するのに使用した「ドローン」は、手元の操縦機から無線で遠隔操作するもので、様々な種類が販売されており、個人でも購入することができます。
通常は複数のプロペラを持つ小型のヘリコプターの様な形をしており、一般的にはマルチコプターと呼ばれることも多いようです。
このドローンについては、様々な分野で急速に利用に向けた動きが活発化しています。
2013年に放送されたNHKの朝の連続ドラマ「あまちゃん」のオープニングで、小型カメラを搭載したドローンを使って撮影した映像が使われていましたので、目にされた方も多いと思います。
近年の小型カメラの高性能化・低価格化と相まって、ヘリコプターやパラグライダーなどを使った本格的な空撮よりもコストをかけずに、迫力ある高画質映像が撮れるということで、冒頭に紹介した唐桑のユースホステルの事例のように、アマチュアの愛好家が自ら撮影した動画を投稿サイトで公開するといった動きも盛んです。また、最近ではドローンを使った空撮をサービスとして提供する企業も複数存在するようです。
また、2013年12月にはネット販売大手のアマゾン社が、ドローンを使って注文者の自宅まで直接品物を配送するサービス(Amazon Prime Air)の研究に着手する事を発表して話題になりました。このほかにも、災害地での現状把握や施設の設備点検など、人が入ることの難しい場所などで活用することなども期待されています。
観光プロモーションにおける活用への期待
観光の分野でも、各地の地方自治体や観光協会が、地域の姿を紹介するプロモーション映像を制作するに当たってドローンを活用する例も見られるようになっています。
例① 柏崎観光協会(新潟県柏崎市)
例② 留寿都村観光協会(北海道留寿都村)
2014年にGoogle社が米国で行った調査では、旅行者が観光の目的地を決めるまでにどのような情報を探索するか、という点に関して、目的地や現地での行動を検討する過程では5~6割、実際に予約を行う際に4割弱の旅行者が旅行に関連する動画を視聴するといった結果が出ています。
このように、観光地のイメージを伝える手段として、このような動画に対するニーズが今後より一層高まることが予想されますが、その際には、地域の魅力を普段とは違った「鳥の目」で伝えられるという意味で、有効な技術なのではないかと思います。
なお、このように様々な分野での活用に期待が高まる一方、その運用に当たっては、操作ミスによる墜落や航空機との衝突といった事故の危険性、あるいは市街地で飛ばす際のプライバシー侵害に対する懸念など、様々な課題も指摘されるようになっています。このため、政府としても規制やルール作りを視野に入れた検討を本格的に開始した段階です。
今後、運用に関する各種の環境整備が適切に行われ、より効果的かつ手軽に地域の魅力を伝える選択肢の一つとして活用される事例が増えていくことを願いたいものです。
参考
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- The 2014 Traveler’s Road to Decision
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https://www.thinkwithgoogle.com/research-studies/2014-travelers-road-to-decision.html