長期間にわたり発出されていた緊急事態宣言が解除され、少しずつ、旅行市場も動き出しはじめました。今回は、前回のコラムに続き、コロナ禍における旅行市場の変化についてみていきたいと思います。
20代がコロナ禍の旅行市場を牽引
観光庁「旅行・観光消費動向調査」によると、2020年の国内宿泊観光・レクリエーションにおける延べ旅行者数は9,183万人で、前年比46.5%減となりました。性・年代別にみてもいずれの年代も延べ旅行者数の前年比は大幅減、特に、10代、80代以上で大きく落ち込み、延べ旅行者数は6割減となりました。また、9歳以下、60~70代でもほぼ半減となりました。その一方で、20代は前年比マイナス3割台にとどまり、延べ旅行者数及び旅行平均回数(実施者)が最も多くなりました。直近5年では、2016~2017年は60代、2018~2019年は40代の延べ旅行者数が最多でしたが、コロナ禍における旅行市場は20代が牽引していました。
域内旅行の増加・定着
昨年度は「マイクロツーリズム」という言葉を耳にする機会が多くありました。以下の図2は、(公財)日本交通公社「JTBF旅行実態調査2020・2021」をもとに、地域別の域内旅行の割合を示したものです。例えば関東であれば、関東地方に居住する人の旅行先が関東地方内であった割合を示しています。これをみると、1回目の緊急事態宣言が発出された2020年4月頃から、すべての地域において域内旅行比率が高まっていることがわかります。その後、北海道・東北、九州・沖縄においては域内旅行率が8割前後と高い水準で推移しています。それに対し、関東や関西では2020年5~6月をピークに減少。しかし、1回目の緊急事態宣言ほどの高まりはないものの、コロナ禍前に比べると域内旅行割合は底上げされたまま継続しています。コロナ禍においては、密を避け、人との接触をなるべく避けるために自家用車を利用したい、コロナの感染拡大を域内でとどめようといった意識から域内旅行が増え、定着しています。
おわりに
今回は、コロナ禍における旅行市場の変化として2点ほどご紹介しました。
今月10月28日・29日に開催する当財団主催の「第31回旅行動向シンポジウム」では、今回用いたJTBF旅行実態調査など当財団が継続的に実施している独自調査の結果などをもとに「コロナ禍における世界・日本の観光のいま」を解説します。さらに、中長期的な視点での社会や観光における変化に着目し、今年度から当財団が新たに取り組んでいる研究の中から、「ポストコロナ社会において注目したい観光の変化」に関する研究報告もあわせて行います。現在、参加申し込み受付中ですので、ご興味のある方はぜひお申込みください。
また、新型コロナウイルス感染症の流行が旅行市場におよぼした影響把握を目的に、定期的に実施している「JTBF旅行実態調査」や「JTBF旅行実態調査」の調査内容を拡充し、分析を進めるとともに、結果の公表を行っています。ご興味のある方は、ぜひ、ご活用ください。