訪日外国人の「食」について、今回はラーメンに着目してみたい。観光庁の訪日外国人消費動向調査(平成29年)によると、「日本旅行中に『一番満足した飲食』」では、訪日外国人の2割以上が「ラーメン」を選択するという結果が出ている。日本食の代表である「寿司」が17%であることと比較すると、ラーメンの人気ぶりがわかる。これは同じラーメンでも、スープや麺の違いで多くの種類があることとも関係するだろう。訪れる地域によって代表的なラーメンの種類は異なり、国籍によっても嗜好の違いがある。そこで旅行口コミサイトにおける口コミ数から、国籍や訪問地域と、好まれるラーメンの関係性について探ってみたい。
前回のコラムと同様、データは代表的な旅行口コミサイトに掲載されている飲食店の言語別(英語、韓国語、中国語)口コミ数をカウントすることで取得した。うち、ラーメン店であると思われる飲食店(約900件)を選択し、お店の代表的なラーメンの種類で分類を行った。中華料理店やつけ麺、坦坦麺、ちゃんぽんの飲食店などは除いている。ラーメンの種類については「醤油」「味噌」「塩」「豚骨」「その他」というオーソドックスな5分類とした。代表的なラーメンの種類は、店名やブランド、Web上で得られるメニューや口コミ情報をもとに判断した。代表的なラーメンがない飲食店(どんな種類のラーメンでも置いてる店など)の場合は「その他」としている。
ラーメンの種類は地域によって偏りがあるので、まずは「塩」や「味噌」が多い北海道と、「豚骨」が多い九州を除いた、本州と四国の結果について見てみたい。ラーメンの種類について、言語別に、全口コミ数に占める割合を示す。
日本語と比較すると、外国語の口コミは全体的に「豚骨」が多い傾向にあるため、外国人観光客は「豚骨」を日本のラーメンの代表として見ているのかもしれない。特に韓国語での割合が高く、「豚骨」は6割を占める。人気店の口コミでは、「口に合う」「なじみがある」「一番好きなスープ」などと評価されており、豚骨スープは韓国人好みの味なのかもしれない。また、チャーシューの味や量を評価する口コミも多い。訪日外国人消費動向調査(平成29年)によると、韓国人の「日本旅行中に『一番満足した飲食』」は「肉料理」がトップで、こうした韓国人の「肉料理」好きが表れている。
一方、英語では他の言語と比較して「味噌」の割合が高くなる。昨今、米国等を中心に味噌ブームが広がっていると言われており、こうした味噌へのなじみも関係している可能性がある。口コミでは、味の素朴さや脂っこくないスープを評価するコメントが見られる。「醤油」や「塩」もあっさりとしているが「味噌」ほどは味になじみがない。「豚骨」ほど脂っこくないものの味にはなじみがあるという点が、人気を呼んでいるのかもしれない。
次に北海道での結果を示す。日本語の口コミでは、ほぼ「豚骨」が消える代わりに「塩」と「味噌」が大半を占めるようになる。札幌ラーメンや函館ラーメンがこれらの代表であろう。特に英語では「味噌」ラーメン店の口コミが多く半数を占めている。また日本語と比較すると、中国語や英語では「醤油」の割合も高い。北海道で醤油ラーメンと言えば旭川ラーメンだが、外国人観光客の間では旭川ラーメン人気も高まっているのかもしれない。
最後に九州での結果を示す。日本語も含め、全ての言語で「豚骨」が9割以上を占めており、言語による違いは見られない。国籍にかかわらず、また好き嫌いにかかわらず、九州を訪れた旅行者がラーメンを選ぶ場合、ほとんど「豚骨」を食べているようだ。
ラーメンの種類と口コミ数の関係について、言語による違いと地域による違いを見てきた。言語による嗜好の違いが多少は見られるものの、地域による違いのほうが圧倒的に大きい。人気店の口コミを見ると、サービスや立地、お店の雰囲気などよりも、味に対する評価が多く見られる。ご当地ラーメンは日本全国にあるが、日本を訪れる外国人も日本人と一緒で、それぞれの地域の美味しいラーメンを求めているようだ。