日本国内各地で様々な音楽を題材にしたイベントが開催されています。音楽のジャンルもクラシック、ジャズからロックまで様々、音楽の楽しみ方・接し方もイベント毎に特色があるようです。一方、イベントと地域の関係性も様々です。今回は音楽イベントと地域の関係性について考えてみます。
■様々な賑わいを魅せる音楽イベント
「音楽イベント」とかなり大雑把な括り方をしてしまいましたが、その内容は実に様々です。いくつか例をあげてみましょう。一つには、一定の会期中に演奏家を対象としたワークショップやワークショップの受講生も交えたコンサートが開かれるタイプのイベントがあります。このような音楽イベントとしては、日本初の音楽アカデミーとして1980年以来の歴史を持ち、その後音楽を聴いて楽しむフェスティバルとしての顔を併せ持つようになった「草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティバル」、同じく1980年に創立された「霧島国際音楽祭」等があげられます。
一般的にイメージされるのは、やはり「音楽を聴いて楽しむ」ことを中心に据えたイベントでしょうか。これは枚挙にいとまがありませんが、観光地(温泉地)での取り組みとしてみると1975年の「星空の下の小さなコンサート」としてスタートした「ゆふいん音楽祭」、世界的ピアニストであるマルタ・アルゲリッチのコンサートを契機にスタートした「別府アルゲリッチ音楽祭」等が興味深いところでしょうか。
一方で、ロックフェスティバルのような大規模イベントを思い浮かべる方もいることでしょう。国内では「FUJI ROCK FESTIVAL」、「SUMMER SONIC」、「RISING SUN ROCK FESTIVAL」、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」を指して「四大ロックフェスティバル」と呼ぶようです。「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」の入場者は3日間で15万人規模といわれます。
■イベントと地域との関係性
上に挙げたのは音楽イベントのごく一部のスタイルですが、いくつかの側面で性格の相違が見られます。
まず参加者がイベントにどのような形で関わるのか。リスナーとして音楽を楽しむというのが一般的ですが、草津や霧島の例のように演奏家が技量を高めるためのイベントを核にしているものもあります。
そしてもう一つ大きなポイントとなるのが、イベントと地域の関係性です。アーティスト同士の縁や地域とアーティストの縁など、その土地でそのイベントが発展してきた理由が明確なものがある一方で、大規模なロックフェスティバルのように大音量を開放できる空間という物理的制約条件から開催地が決まるイベントもあると思われます。このようなイベントと地域との関係性は、当然のことながらイベントの運営体制とも関連しており、前者では地域側に運営主体の軸足が置かれているケースがほとんどです。
■ロックフェスティバル開催地としての国営公園
それでは実際にロックフェスティバルのように開催に際して物理的制約が大きい音楽イベントはどのような会場で開催されているのでしょうか。現状ではコンベンションホール等の屋内空間や、都市海岸部の埋め立て地あるいは山間地等のオープンスペースで開催されるケースが多くなっています。その中で複数のロックフェスティバルの会場になっているのが国営公園(表参照)で、四大ロックフェスティバルの一つ、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」も国営ひたち海浜公園を会場として開催されています。
国営公園は国土交通省が所管する都市公園で、その多くは「都道府県の区域を越えるような広域の見地から」設置されているものです。敷地面積については概ね300ヘクタール以上とされていますが、これだけのスケール感を持ったオープンスペースは他に見られないといってよいでしょう。大音量を処理するだけでなく、多くの参加者を収容する上でも、国営公園は好適な空間だと言えます。また、国営公園はできるだけ良好な自然的条件を有する土地、あるいは歴史的な意義を有する土地を含むよう選定されています。このことが、質の高い快適な空間で音楽を楽しむことを可能にしていると言えるでしょう。
<国営公園で開催されるロックフェスティバル> |
■今後に期待したいロックフェスティバル参加者と地域の接点
しかし一方で、「地域で開催されるイベント」としてみたときに気になる点もあります。1つは国営公園がまとまった面積をもっているため、イベントが国営公園の閉じた空間内で完結してしまいがちだということです。もちろん、遠隔地から出かけてくる参加者が宿泊や飲食等の消費を行うことになりますが、地域社会/地域住民との接点といった観点からすると、やはり希薄ではないでしょうか。
今後、これらのロックフェスティバルについても地域コミュニティとの接点が増えてくると、より地域色豊かなイベントとしての魅力が増すように感じます。