ファンが支える東北復興 [コラムvol.230]

 先日、契約している携帯会社からメールで、東日本大震災の被災地の子どもたちへの累計寄付額が約7億となった旨のメールを受け取りました。これは、携帯の基本料金に合わせて、毎月自動的に寄付することができるサービスで、震災以降、継続して利用している東北支援の仕組みの一つです。震災から4年目となりましたが、未だ約24.7万人(2014年8月現在)もの方が避難をされており、復興住宅や復興まちづくり(高台への集団移転等)、産業の復旧・復興も道半ばの状況にあります。しかし、時間の経過とともに、ボランティア数や支援活動団体の資金が減少しているといった報道も目にします。

 東北の復興支援について、2011年と現状ではどのような意識の変化が出てきているのでしょうか。2011年より当財団で取り組んでいる「東北地方の観光復興に向けた研究」において実施したインターネット調査*1結果から、その状況を考えてみていきたいと思います。

直接的な支援から間接的な支援へ

 震災以降の東北復興に向けた支援内容と継続状況を見てみると、2011年では「義援金やふるさと納税などの寄付」の実施率が最も高く76.1%でした。しかし、2012年には37.3%、2013年には23.8%と急激に減少しています。一方で、年々増加しているのは、「復興支援につながる商品の購入」、「アンテナショップや物産市等での被災地域特産品の購入」です。また、実施率は少ないものの「東北全体支援のための東北旅行」、「被災地支援のための被災地への旅行」についても増加傾向にあります。

 震災直後は、「寄付」や「支援物資の送付」といった直接的な支援だったものが、時間経過とともに「物品購入」「旅行」などの間接的な支援に変化してきています。これは市場側の心理変化だけでなく、被災地において、商品・サービスを提供できる状況にまで復旧・復興が進んできている状況とも言えます。

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誰が支援を継続しているのか

 では、どのような方が東北への復興支援を継続していきたいと考えているのでしょうか。

 東北地方や自然災害との関係性別に、復興支援の継続意向を聞いたところ、「今後も継続して積極的に行っていきたい」*2と回答された方の割合を見たのが下表です。

 「ご自身が東日本大震災で被災したから」が最も多く、次いで「東北地方太平洋沿岸部のファンだから」となりました。ここで注目したいのは、「東北地方太平洋沿岸部のファンだから」、「東北地方のファンだから」という回答です。「東北地方太平洋沿岸部のファンだから」は16.4%、「東北地方のファンだから」は14.7%で、東北出身者(「東北地方出身者であるから」16.0%)や東北居住者(「現在、東北地方に居住しているから」15.2%)、東北地方居住経験者(「学生時代や勤務の都合で東北に居住したことがあるから」15.0%)と同程度で、東北地方を応援していきたいと考えていることが分かりました。

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 次に、「東北地方太平洋沿岸部のファンだから」、「東北地方のファンだから」と回答された方と「全体」について、震災以降の「東北旅行」および「被災地への旅行」の実施状況を比較しました。その結果、「東北地方太平洋沿岸部のファンだから」、「東北地方のファンだから」と回答された方は「全体」と比較すると、旅行の実施率が高くなりました。

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調査結果から見えてきたこと

 この調査結果で興味深く感じたのは、「ファン」の存在です。

 2011年に東北各県で震災後の来訪者の状況についてヒアリング調査を行った際、工事関係者やボランティアといった復興関係者以外で、東北や被災地に早い段階で来訪していたのは「なじみ客」であったという話を聞きました。今回の調査結果では、「全体」と比べて大きな差があるわけではないですが、「ファン」はより多く東北や被災に来訪していたことが分かりました。さらに、東北出身者や居住者と同程度の割合で、復興を応援したいと思う気持ちを持っているのです。

 このような「ファン」とは、ただ地域のことが好きということだけでなく、地域の取り組みを応援してくれる理解者と言えます。本調査の結果から、「ファン」は地域を支えてくれる大切な層であることを再認識したとともに、「ファン」を増やしていくことは、非常時にも強い地域づくりにつながることが見えてきました。

 なお、本年度「東北地方の観光復興に向けた研究」は、2011年度~2014年度の調査研究の取りまとめを行っております。研究結果については、今後HP等を通じて公開していく予定にしております。

*1 4年3月に実施した全国21歳から80歳以下の男女(9469件)に対して実施したインターネット調査。
*2 「復興支援の継続意向」については、「今後も継続して積極的に行っていきたい」、「今後も可能な範囲で行っていきたい」、「今後は、被害の大きさに関わらず他の自然災害の被災地支援を行っていきたい」、「今後は、甚大な自然災害の被災地を可能な範囲で支援していきたい」、「東日本大震災に限らず、被災地支援に特に関心はない」の5択とした。