近年、海外の出版社から、様々な旅の楽しみ方を提案する旅行ガイドがいくつも出版されています。
日本語に翻訳されたものとしては、日経ナショナル・ジオグラフィック社発行の『いつかは行きたい 一生に一度だけの旅 BEST500』(イアン・アレクサンダーほか著、2007)、『一生に一度だけの旅 心に響く世界 BEST500』(ジル・アンダーソンほか著、2008)、『一生に一度だけの旅 世界の食を愉しむ BEST500』(キース・ベローズほか著、2010)や、イースト・プレス社発行の『死ぬまでに一度は行きたい世界の1000ヵ所』シリーズ(ヨーロッパ編、南北アメリカ編、アジア・アフリカ編、全てパトリシア・シュルツ著、2007)などがあります。みなさんも、書店でこれらの本を実際に手に取ってご覧になったことがあるかもしれません。いずれも、世界各地の名所や穴場を美しい写真やエッセイとともに紹介しているものです。
私も職業柄、できるだけこれらの旅行ガイドに目を通すようにしていますが、つい先日、非常に興味深い1冊の旅行ガイドに出会いました。それが、ロンリープラネット社発行の『Lonely Planet’s 1000 Ultimate Experiences』(「ロンリープラネット社が提案する究極の旅の体験 1000」、2009、日本語未訳)です。
私が興味を持った理由は2つあります。
1つ目の理由は、同書では、旅を味わいつくす数々の「アイデア」と「体験」に焦点を絞り、新しい旅の楽しみ方と可能性を提案している点です。
従来の旅行ガイドは、一般的に、旅の行き先である「場所」の紹介や解説が中心であり、現地での過ごし方も「見る」「歩く」「食べる」「買う」「遊ぶ(=観光施設やイベントを体験・参加する等)」といった基本的な活動を取り上げるに留まっています。
一方、同書では、例えば「(物事を)深く考える」というテーマを取り上げ、その具体的な場所として、アテネ(ギリシャ)の遺跡でプラトンやアリストテレス等の古典哲学を読むこと、ワシントンDC(米国)のナショナル・モール前に広がる人口の池(リフレクティング・プール)で平和について思索すること、等を提案しています。同書の特徴は、旅人の時間の過ごし方を具体的かつ独創的に提案している点にあります。これは、旅人にとっては、新たな旅を誘う啓発書となります。また同時に、私たちのような観光の研究者にとっては、旅・旅行・レクリエーションの意味や形態を研究する貴重な資料になります。
また、私が同書に興味を持った2つ目の理由は、同書で提案されている様々なアイデア、体験、場所が、外国人の視点しかもグローバルに活動する旅の達人の視点でまとめられている点です。
明治時代の避暑地(軽井沢等)は外国人によって開発され、それは次第に日本人自身の楽しみの場となり、日本を代表する観光地・リゾート地として発展することになりました。また、日本の近代登山は、同じく明治時代に我が国を訪れた宣教師ウエストンが日本アルプスを世界に紹介したことが端緒となって発展しました。私は、日本人の旅・旅行・レクリエーションが質的・量的な面からさらに豊かなものになるきっかけのひとつは、外国人の旅の楽しみ方に学ぶことだと感じています。外国人の旅の楽しみ方や余暇の過ごし方を取り入れたり模倣したりすることは、日本の伝統的な遊び方や余暇の過ごし方(お祭り、湯治、、等々)の再発見や、日本の風土や歴史文化に合った新しい旅の楽しみ方の提案にも繋がっていくはずです。
◆『Lonely Planet’s 1000 Ultimate Experiences』-日本に関する体験や場所の紹介
同書では、旅のアイデア・体験・場所に関する100のテーマが提案され、それぞれのテーマに対して具体的な体験内容と場所が10個紹介されています。「100テーマ」×「10の体験内容・場所」=「合計1000の提案」となります。
まずは同書の紹介にあたり、皆さんもご関心が強いと思われる、同書に掲載されている日本の体験や場所をご紹介します。1000の提案のうち合計23個が日本に関するものですが、一般の旅行ガイドに掲載される内容と大きく異なることに驚くことでしょう。東京が数多く取りあげられていること、文化や伝統に関するものが多い一方で自然資源に関するものがやや少ないことが特徴と言えます。東京が数多く取りあげられている理由はいくつかあるでしょうが、やはり、東京の都市としての魅力が世界レベルで際立っていることがうかがえます。
また、同書では、日本の伝統的な生活体験ができる「旅館」や、その他の優れた日本の魅力や技術などは取りあげられていません。これは、日本の情報発信がまだまだ十分ではないことを反映しているとも言えるでしょう。
このように、外国人旅行者の視点から、また、グローバルな旅の魅力とテーマ性という視点から選定されたこれらの体験や場所そしてその理由について考えることは、日本人と外国人の旅の楽しみ方の違いを理解するひとつの糸口になるはずです。
# | テーマ | 場所 | 紹介文(一部抜粋) |
1 | 世界で最も幸せな場所 World’s happiest places |
和歌山県日高川町 Hidakagwa, Wakayama, Japan |
毎年10月に開催される笑い祭では、道化に先導された日高川町の住民が鈴を鳴らして「笑う!笑う!」と叫んで通りを歩く。決して飲み放題の日本酒で酔っぱらっているわけではない。 |
2 | 最高の市場(マーケット) Greatest Markets |
築地市場 Tsukiji fish market, Japan |
東京にある熱狂的な魚市場は、世界で最も大きく賑わいを見せる市場のひとつである。シーフード料理に興味がない人も病みつきになる。 |
3 | 断層!地震体験をするのに最高の場所 Faultline! Best earth-shaking experiences |
防災センター(地震の科学館) Tokyo Kita-city disaster prevention centre, Japan |
日本では年間1000回以上の余震がある。同館では展示解説だけでなく、世界最大の地震の揺れを体感できるシミュレーターがある。こいつは最高に楽しい。 |
4 | 究極の都市滞在 Ultimate city breaks |
東京 Tokyo, Japan |
新宿の真ん中に立って、ネオンと奇妙なファッションの人たちに囲まれていると、違う惑星を訪れた錯覚に陥る。 |
5 | 家族で過ごす最高の場所 Best family holiday destinations |
華やかで巨大な都市 東京 Bright lights, big city, Tokyo, Japan |
小さな子供達はハロー・キティやドラゴン・ボールのおもちゃに熱狂する。少し年上の子供達は漫画のキャラクターに扮したコスプレに興味津々。 |
6 | 1杯のお茶を楽しむ最高の場所 Best places for a cuppa |
宇治 Uji, Japan |
日本のお茶の首都。緑茶は豊富に栽培されており、伝統的な茶箱、お店の店頭、そば茶、アイスクリームなど、至るところで目にする。お茶の重要性を理解するためには、伝統的な茶の湯(お茶会)に参加しなければならない。 |
7 | 旅する時期と場所の最高の組合せ Best season & places combinations |
東京、お花見の時期 Tokyo during Hanami, Japan |
日本人はお花見することに喜びを感じる。お花見の時期は短く、2月から4月頃である。人気スポットで混雑するのは上野公園と代々木公園。もう少しのんびり楽しみたい人は新宿御苑がよい。 |
8 | 代表的・典型的な旅の体験 Quintessential travel experiences |
京都での書道体験 Calligraphy in Kyoto, Japan |
伝統的な日本文字を筆で書いてみたい人は京都にある「WAK JAPAN」(The Women’s Association of Kyoto)主催の書道教室に参加するとよい。うまくいかずにイライラするが、体験するだけの価値はある。 |
9 | 仮装を楽しむのに最高の場所 Best places to don fancy dress |
コスプレ居酒屋 Cosplay pubs, Tokyo, Japan |
秋葉原には、漫画やアニメのコスプレ・ワールドが広がっている。コスプレ居酒屋に入ると、銀髪で険しい表情をした戦士がビールをチビチビ飲んでいる。 |
10 | 最高にワクワクする通勤・通学風景 Most spine-tingling commutes |
東京の地下鉄 Subway in Tokyo, Japan |
通勤・通学ラッシュアワーに同乗するのは、社会学的観察をする理想的手法である。東京の地下鉄はイワシの缶詰以上にすし詰めだが、人々は車中で他人にとても気をつかう。日本人は車中で居眠りする特別な技術を身につけている。 |
11 | 最も安価な宿泊施設 Best cheap sleeps |
カプセルホテル、東京 Capsule hotel, Tokyo, Japan |
質素な広場恐怖症にとってカプセルホテルほどふさわしい場所はない。棺より若干大きめのサイズの部屋だが、TV、エアコン、目覚まし時計等、必要なものは揃っている。 |
12 | 世にも奇妙な博物館・美術館 Strangest museums |
目黒寄生虫館 Meguro parasitological museum, Japan |
正直に言うと、ここが世界で一番奇妙な博物館だと思う。色付のビーカーと試験官が壁際に並び、多種多様の寄生虫が詰め込まれている。同館はここを恋人たちの最高のデートスポットと宣伝している。注意:見学後にカレーを食べないように。 |
13 | 最高のクリスマスが楽しめる人気スポット Finest yuletide hotspots |
東京 Tokyo, Japan |
クリスマス時期の東京は、おとぎ話のように美しく、しかも無宗教で楽しめる!非キリスト教徒だがクリスマスを大いに楽しんでおり、クリスマスイブはバレンタインデーと同様に、重要なイベントになっている。 |
14 | ほとんど知られていないが最高に素晴らしい場所 Greatest little-known neighbourhoods |
中目黒 Naka-meguro |
目黒川の土手沿いにはカフェ、ファッション、雑貨店が建ち並ぶ。芸術家気取りの若者が移り住み、ギャラリーの展示やショッピングが楽しめる。 |
15 | 心を休めるのに最適な場所 Best spiritual sleeps |
蓮華定院、高野山 Rengejo-in temple, Mount Koya, Japan |
日本の宿坊では大都会の喧噪を避けることができる。蓮華定院は高野山山頂にある。俗世の楽しみは大阪に置いておき、禅による悟りの道へいざ乗りだそう。 |
16 | 世界で最も風変わりなお祭り World’s strangest festivals |
裸祭り Hadaka Matsuri, Japan |
日本の裸祭りの起源は、古来の精神浄化にある。おびただしい数の男性が服を脱ぎ、冷たい川の水を浴び、全裸でお寺の周りを走り回る。 |
17 | 裸で泳ぐのが最高な10の場所 Top 10 places to go skinny-dipping |
伝統的な温泉 Traditional Onsen |
温泉は日本の神聖な文化とみなされている。日本のサラリーマンは仕事の疲れを温泉で癒し、都市生活のしがらみを解放する。全裸になれるならば、自然に温泉に入ることができる。全裸になることが理解できない西洋人もいるが、機会があればぜひ体験すべきだ。 |
18 | 絶対に行くだけの価値がある場所 Best value destinations |
日本 Japan |
五感を総動員して東京のクラブ、バー、カラオケボックス、レストランを回ってもよいし、路地を散策してもよい。東京はすることがたくさんあり、お金もかからない。温泉、着物を着た年配の女性など、伝統的なものも部分的に残っている。様々な見所があり、飽きることはない。 |
19 | 最も不気味な食事体験 Weirdest dining experiences |
ふぐ、日本 Fugu, Japan |
日本人はフグの調理を知悉しており、フグ料理とひれ酒の2つの楽しみ方がある。お金に余裕のある人だけが楽しめるもので、約10000円程度である。 |
20 | ポーターなしで登る、最高の登山 Top mountains to climb without a porter |
富士山 Mount Fuji, Japan |
世界で最も登山者が多いと言われている山。間違いなく世界で最も有名な山。登山シーズンは7月8月だが、この時期は非常に混雑する。 |
21 | 最も奇妙なレストランとバー Most bizarre restaurants & bars |
アルバトロス、東京 | 新宿の思い出横丁にあり、10名以上は入店できないほど狭い。ギャラリーがある3階建ての小さな建物で、天井に開いた穴を通してスタッフから飲物が渡される。穴から落ちないように気をつければ、愉快な時間を過ごせる。 |
22 | 最良の伝統 Best traditions |
茶の湯、京都 Tea ceremony, Kyoto, Japan |
茶器を口にするまでに、たくさんのお辞儀と儀式を準備する必要があり、由緒ある儀式は最長4時間を要する。最良の茶の湯は古都京都の伝統的な茶室で行われる。 |
23 | 最も大きい10のオブジェ Top 10 big objects |
牛久大仏 Ushiku Amida Buddha, Japan |
牛久大仏は120mもあり、像として世界で最も大きい。牛久大仏の指は7mもあり、自由の女神の指の3倍も大きい。 |
出典:『Lonely Planet’s 1000 Ultimate Experiences』、邦訳:著者
Lonely Planet’s 1000 Ultimate Experiences |
世界で最も幸せな場所 |
和歌山県日高川町・笑い祭りの総本山「丹生神社」 |
「和歌山県日高川町」紹介文 |
写真出典:iPadアプリ『Lonely Planet’s 1000 Ultimate Experiences』
◆『Lonely Planet’s 1000 Ultimate Experiences』-旅を楽しむ1000の提案(タイプ別)
次いで、同書で取りあげられている100テーマをタイプ別に整理して、ご紹介します。大分類には、(1)「(旅の主体である)旅人の旅先における行動・体験に主眼を置いた提案」と(2)「(客体である)場所・資源の特徴やテーマ性に主眼を置いた提案」の2つを用いました。また、小分類では、テーマを共通要素でまとめて、34のグループに整理しました。ご覧いただくと分かりますが、旅を存分に楽しむ切り口がいくつも提示されており、非常に興味深いものとなっています。
旅人の活動・経験内容、訪問先(観光地)の魅力を形成する要因に関する研究はこれまでにも数多く存在しました。しかし今後は、同書のような旅行ガイドも資料として活用し、「人はなぜ旅をするのか」「旅することの喜びとは何か」という本質的な問いを出発点に、人間の喜び・楽しみ・生きがいと旅のあり方の関わりを掘り下げていく研究が求められていると感じています。
※訪問先での旅人の活動・経験内容については、マイヤー(Meyer、1977)の7タイプ(冒険、経験、調和、教育、健康、接触、地位)の分類をはじめとする様々な既往研究が存在します。
※訪問先の魅力を形成する要因については、ハッドマンとホーキンス(Hudman & Hwkins,、1989)の12要因(建造物とその環境、文化的活動、宗教、政治、科学、自然、気候、風景、野外生活、屋外レクリエーション、娯楽、健康と温泉)の分類をはじめとする様々な既往研究が存在します。
# | タイプ (大分類) |
タイプ (小分類) |
テーマ |
1 | 「旅先における行動・体験」に主眼を置いた提案 | 刺激 | 最高に興奮できる体験、最高の冒険旅行を楽しむアイデア、危険ぎりぎりの旅、最高のウォータースポーツ・アドベンチャー |
2 | リラックス | ハンモックで寝転がるのに最適なビーチ、思索にふけるのに最適な場所、人目に付かない休暇を過ごすのに最適な場所、スローな旅を楽しむ最高の方法、時が止まるように感じる最高の体験 | |
3 | 飲食 | 1杯のお茶を楽しむ最高の場所、最も不気味な食事体験 | |
4 | 歩く | 最高のトレッキング | |
5 | 乗り物に乗る | 究極のドライブ休暇、北米における最高のスキースポット、最高の船旅、究極のセーリング(帆船の旅) | |
6 | 泳ぐ | 夢のように最高なダイビングスポット、夢のように最高なサーフィンの波、裸で泳ぐのが最高な10の場所 | |
7 | 音楽を聴く | ブルースを楽しむ最高の場所、音楽を楽しむ最高の場所 | |
8 | 仮装する | 仮装を楽しむのに最高の場所 | |
9 | ローカルとの交流 | 最高に格好いいワーキングホリデイ、地元住民に挑戦するのに最適な場所 | |
10 | 特定の同行者と時間を過ごす | 家族で過ごす最高の場所、相手に唇を奪う(キスする)のに最適な場所 | |
11 | 旅のコスト軽減・効率性 | 最高に格好いいワーキングホリデイ、休暇滞在費をやりくりする最上の方法、ヨーロッパを見て回る最高の方法 | |
12 | 特定時期・年令の体験 | 中年の危機(ミッドライフクライシス)を乗り切るのに最適の場所、青少年少女にとって最高の冒険、結婚式を挙げるのに最高の場所・同時に離婚したあとに訪れるのに最高の場所 | |
13 | 典型的・知名度がある体験 | 代表的・典型的な旅の体験 | |
14 | 特定エリアに特化した体験 | オーストラリアのアウトバック(人口希薄な砂漠地帯)における最高の体験、ニュージーランドでの最高級のアクティビティ | |
15 | 「場所・資源の特徴やテーマ性」に主眼を置いた提案 | 場所全体の魅力・価値 | 究極の都市滞在、時間の流れをさかのぼって過去の時代を体験できる場所、最も魅力的で最重要リストにのせるべき場所、絶対に行くだけの価値がある場所、馬鹿騒ぎができる究極の都市 |
16 | 自然環境 | 最も極端な自然環境、断層!地震体験をするのに最高の場所、最高の自然公園・資源保護地域、夏至・冬至に魂を浄化できる場所、最も見応えがある自然環境、最も素晴らしい熱帯の楽園、ポーターなしで登山する最高の山、人がほとんど行かない最高の国立公園、世界で最も暑い場所・寒い場所 | |
17 | 野生生物 | 野生動物に会える究極の場所 | |
18 | 風景 | 超現実的=シュールレアリスムな風景、最高にワクワクする通勤・通学風景、エッフェル塔から見る最高の眺め | |
19 | 都市空間 | 最も美しい都市広場、最高の市場 | |
20 | 建築、遺跡 | 最も象徴的な建築構造物、神々しく畏敬の念を起こさせる遺跡、土木の天才による最高の作品、最も美しい建築物、最も大きい10のオブジェ | |
21 | アート | 最高のパブリックアート(公衆芸術)、世にも奇妙な博物館・美術館、美術愛好家にとっての最高の聖地 | |
22 | 食べ物・飲み物 | 路上で楽しめる最高の食事、ニューヨーク最高の食文化、英国最高の郷土料理、最も奇妙なレストランとバー | |
23 | 伝統文化 | 最良の伝統 | |
24 | 聖地・宗教 | 創造主と出会える最も聖なる場所 | |
25 | 人 | 世界で最も幸せな場所、最も国民が親切な国 | |
26 | 祭り・イベント | 世界で最も幸せな場所、最高のクリスマスが楽しめる人気スポット、世界で最も風変わりなお祭り、絶対に行くだけの価値があるエンターテイメント、世界最高の競技イベント、最も象徴的なスポーツイベント | |
27 | 宿泊施設・場所 | 最も奇妙な宿泊施設・場所、最も安価な宿泊施設、最高のエコロッジ(環境に配慮した宿泊施設)、心を休めるのに最適な場所 | |
28 | 交通機関 | 最上級のクラシック列車の旅 | |
29 | 稀少資源 | 信じられないほど素晴らしいが消滅しつつある場所、姿を消しつつある資源とその代替物、最も持続可能な旅が体験できる場所 | |
30 | 国際色、多様性 | 最も国際色豊かなアフリカの都市 | |
31 | 旅のルート | 歴史的に最も著名な旅のルート、バックパッカーには絶対に欠かせない旅のルート、キャンプカーで回る古典的ルート、米国で最高のドライビングルート、英国で最高の散策ルート | |
32 | 出発地・到着地 | 驚くほど美しい到着地 | |
33 | 典型的・知名度がある/ない | 旅人の間で最も著名な旅の自慢話・作り話・伝説、ジェームスボンドが訪れた都市、おとぎ話を夢見ることができる場所、ほとんど知られていないが最高に素晴らしい場所、観光客向けに高い金をふっかけてくるが行列するだけの価値がある場所、お金がかかる英国で最も人気の場所、目立たないが決して見過ごすべきではない場所 | |
34 | 複数資源等の組合せ | 旅する時期と場所の最高の組合せ、食事と食べる場所の最高の組合せ |
出典:『Lonely Planet’s 1000 Ultimate Experiences』、邦訳・文責:渡邉智彦
注:一部カテゴリーの重複あり
◆結語
観光(旅・旅行・レクリエーションを総括する概念)の現象は、「人間の観光欲求」(A)と「場所・資源等が提供する魅力=観光的価値」(B)の相互関係のもとにあります。すなわち、(A)の存在によって(B)が生まれ、また逆に(B)があるから(A)が発生します。観光の現象は、利用者である人間の側から出てくる「観光的欲求」と観光地の側が提供できる「観光的価値」の両者の間で、「価値」の受け渡しという形で発生し、成立するものです。
そして、『Lonely Planet’s 1000 Ultimate Experiences』には「人間の観光欲求」と「観光的価値」の双方を考えるヒントがあります。旅することの喜びと価値とは何でしょうか。「人はなぜ旅をするのか」「何が人を旅に誘うのか」-皆さんも旅に出かける前にもう一度自分自身に問い直してみると、もっともっと素敵な旅が楽しめるはずです。